当面は開発圧力高止まり 倶知安リゾート地区

2021年09月08日 10時00分

規制強化の動きも

 本道観光のけん引役・ニセコの中核を成す倶知安町。そのリゾート地域では新型コロナウイルス感染拡大後も大規模建設プロジェクトが相次いで浮上し、当面は開発圧力が高止まりするとの見方が広まる。一方、中心部で新規の温泉掘削が制限されるほか、域内での建築規制強化を巡る議論が本格化している。町内外の関係者からは反発や共感、新ルールによる商機拡大への期待が聞こえる。(小樽支社・塚本 遼平記者)

■開発意欲はなお旺盛

 新型コロナウイルス感染拡大でインバウンドが見込めなくなった2020年、町内での宿泊施設着工は失速した。観光地域づくり法人「ニセコプロモーションボード」(NPB)の調査によると、同年の建築確認申請は倶知安町で17件。19年の33件、18年の53件と比べて大きく落ち込んだ。

 とはいえ、数年後の宿泊施設や別荘開業をにらんだ開発意欲は例年と比べても見劣りしない。

 町が08年3月に指定し、リゾートエリアをカバーする準都市計画区域。域内の開発行為許可実績(設計変更を除く3000m²以上)を見ると、20年度は4件で、総面積26万4450m²だった。件数は最多の17、18年度からやや減ったものの、総面積は過去3番目に大きく、直近10カ年では最大となった。

 21年度は8月末までの5カ月間で3件、8万690m²に上る。高い開発圧力は当面維持されるとの見方が強い。ある町議会議員は、新幹線延伸や高規格道路整備を踏まえ「今後5年くらいが開発行為のピークになるのでは」と話す。

■温泉は掘削制限へ

 コロナ禍でも投資家が熱視線を注ぐ中、リゾート地域の中心地ひらふ地区で温泉の新規掘削が今月から制限される。

 近年、同地区では温泉掘削が加速。14年まで年間1、2件程度だった掘削許可件数は19年に10件へと増加し、源泉水位の低下など資源衰退の兆候が確認された。

 このため、掘削の可否を判断する道は昨年度、温泉保護対策要綱を改正。センタービレッジ一帯を新規掘削を認めない保護地域、周辺の山田・樺山の一部を既存源泉から250m以上確保する準保護地域に設定した。15日からの施行で、近く決定される掘削許可分以降が対象となる。

 ニセコの投資状況に詳しい北海道銀行NISEKO出張所の担当者は「掘削制限でひらふ地区の価値が急低下することはないだろう。ただ掘削が可能な他地区の評価が相対的に上がる可能性はある」との見方を示す。

■新ルールに商機も

 開発の在り方を大きく変える可能性があるのは、町が検討中の新たな建築規制ルールだ。

 町の構想では、準都市計画区域を拡大した上で大きく4つのエリアに区分。うち「拠点型」エリアをセンタービレッジ、花園ビレッジ、ワイススキー場の3地区とし、中高層の宿泊施設や店舗の集積を促したい考えだ。一方、山田、樺山、岩尾別・旭・花園の各地区で未開発地が多く残る「保全型」エリアは、建ぺい率や容積率の強化、緑化率の設定に加え、宿泊用途で延べ床面積に上限を設けて大規模開発の抑制を目指す。

 観光、開発に携わる関係者の反応はさまざまだ。ルール作りを協議する景観計画検討会議景観地区検討部会の8月会合で、委員のロス・フィンドレーNPB代表は「規制が厳しすぎるとリゾートとしての前進が難しくなるのでは」と危機感を示した。

 一方、保全型エリアの想定地区で大規模別荘群「ハナクリーク」の開発を計画する香港系エーペックスプロパティのシルビア・タン代表取締役は、規制強化方針に理解を示す。「可能な限りの森林保護に向けた政策を尊重する」と強調。プロジェクトでは宿泊施設を含むクラブハウスも建設予定だが、新たなルールに沿う形で「デザインの一部を変更する準備はできている」と話す。

 規制強化で見込まれる「変動」をビジネスチャンスと捉える声も聞こえる。ニセコで外国人向け別荘建設の実績がある札幌市内の建設業者は「大型ホテルの新築が難しくなるならば、高級戸建て別荘群という開発スタイルが広がるかもしれない」とし、これまでのノウハウを生かした商機拡大に期待を寄せる。

 策定の行方が注目される新ルールは、早ければ22年夏から施行予定。施行時点で未着工の物件に適用される見込みだ。

(北海道建設新聞2021年9月7日付1面より)


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