深川市で完全閉鎖型水耕栽培×水産養殖が始動

2021年09月10日 10時00分

旧多度志中の建物を活用 HPRSと大成建設が協業で

旧・多度志中を転用して活動するHPRSの植物工場

 地域活性化の一環で閉校した中学校を植物工場に転用しようと活動する北海道パレットリサイクルシステム(本社・深川、HPRS)。深川市の無償貸与を受けた2019年から2年近く経過し、完全閉鎖型の水耕栽培と水産養殖を掛け合わせた〝アクアポニックスシステム〟が動きだそうとしている。この取り組みに大成建設が共感し、両社で協業を申し合わせた。林業の町としてにぎわった多度志地区に、次世代スマートタウンの新たな風が吹き始めている。

 HPRSは、コードレス型発電ストーブや太陽光自家発電システムなどで独自の技術を持つ資源エネルギー研究開発企業。近年は、水耕栽培と水産養殖を掛け合わせたアクアポニックスシステムの植物工場を研究する。19年に事業拠点を苫小牧から深川へ移し、旧・多度志中を借り受けて植物工場の整備を進めている。

 同社の植物工場は、水耕栽培で出る根の切れ端を魚の餌に、水産養殖による魚のふんは野菜の養分として循環利用するのが特長。ランニングコストを抑えられるほか、停電時などの事業継続性で強みがあるため、太陽光など再生可能エネルギーを積極的に活用する。

 旧・多度志中では教室棟と管理棟を水耕栽培の施設に改修し、体育館は水産養殖、グラウンドは太陽光発電などで使う計画だ。このほど倉庫を植物栽培ユニット製造のための鋼材加工工場に改修し、植物工場を構築するための設計・製造体制を整えた。8月下旬にレタス苗を初めて定植し、栽培ユニットの拡張や出荷ラインを確立することで、年内の出荷を目指している。

 HPRSの地域循環型ビジネスに協力したいと、大成建設が協業に名乗り出た。スーパーゼネコンとして全国のさまざまなプロジェクトに関わり、土木や建築だけでなく、物流・防災など幅広い分野でノウハウを持つ。地域の困りごとを解決するソリューション活動の一つとして、HPRSを支援できると考えた。

 大成建設エンジニアリングソリューション部の浜口聖児さんは「植物工場として黒字化を図りながら、事業を長く続けられる仕組みを他地域に水平展開したい。地域経済が抱える課題と社会的テーマを同時に解決する突破口として、HPRSはとても大事なパートナー」と話す。

 HPRSの強みは、植物工場の課題を徹底研究している点だ。第1は室温管理に掛かる冷暖房のコスト対策。冬は照明機器の廃熱を暖房に使い、夏は学校の冷涼な施設環境を生かすことで、運用に掛かる電気代を抑える。校舎は管理しやすい2階建て。都市部に多い3階建て以上だと、少人数での管理には限界があると考える。

 新型コロナウイルスによって、部品などのサプライチェーンは影響を受やすいと痛感した。打開策として栽培ユニットを作るための鋼材加工工場を設けたり、資材庫や工作機械を自前で用意。使用する工具や部品は、買いに行く手間や配達待ちを省くため、さまざまな種類をそろえたり余分にストックしている。

「脱炭素社会の推進に一助となりたい」と佐藤社長

 校舎のある多度志地区は、もともと町として栄え、1970年に深川市と編入合併した。昔は林業が盛んで、校舎近くには深川―名寄間を走る深名線の駅舎があり、従事者が多く往来したという。地元の高齢者を中心に、当時の面影を残す旧・多度志中への思いは強い。

 HPRSの佐藤弘幸社長は「地域の農林水産を象徴する場所で、植物工場ができることは何かの縁だと感じている。これからの時代に受け入れられるよう、作りすぎず必要な分だけ製造し、販売方法の研究を進めながら脱炭素社会の推進に一助となりたい」と話している。

(北海道建設新聞2021年9月9日付3面より)


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