本間純子 いつもの暮らし便

 アリエルプラン・インテリア設計室の本間純子代表によるコラム。

 本間さんは札幌を拠点に活動するインテリアコーディネーターで、カラーユニバーサルデザインに造詣の深い人物。インテリアの域にとどまらず、建物の外装や街並みなど幅広く取り上げます。(北海道建設新聞本紙3面で、毎月第2木曜日に掲載しています)

本間純子 いつもの暮らし便(12)トイレドアと表示錠

2021年09月10日 16時30分

 一日に幾度か開くトイレのドアには、「表示錠」が付いています。使用中(施錠時)は赤の色面が、使用していない時(解錠時)は青の色面が小窓から見える仕組みの錠です。トイレ以外で見かけることはなく、使用状態が一目で分かります。

 この表示錠のように色で伝える情報は、身の回りにいろいろありますが、カラーユニバーサルデザイン(CUD)にかなっているかが気になります。

 最近、公共施設や商業施設のトイレドアにはCUDに配慮した表示付きスライドラッチ(横に動かして施錠)を見かけることが多くなりました。見やすいその表示の特徴は、①色面が大きい②明るい赤である③トイレブースの前の通路の明るさが確保されている―の3つです。

 色を認識するには、ある程度の面積が必要です。色面が小さいと色が分かりにくいため判断ミスをしがちです。高彩度色は分かりやすそうですが、色弱者には見分けやすいとは限りません。色面の大きさは重要です。

 また、色弱の色覚タイプの一つ「P型」は、波長700nm近くの赤色を感じる視細胞がない、もしくは感じにくいため、暗い赤を黒に近い色と認識します。JISが定める安全色の赤(マンセル値8・75R5/12)は黄赤寄りで、どの色覚でも見分けやすく、表示錠に採用してほしい色です。

 色面が大きくても明るめの赤色でも、薄暗いところでは色の見分けが困難です。扉の前の通路は色面が見分けられる明るさを確保したいところです。

 住宅のトイレで、①から③までの条件を満たしているところは少ないかもしれません。住宅で使われる表示錠の色面は大きい場合でも直径5㍉程度、しかもプレート面よりへこんだところにあります。その上、取り付け箇所は通常の目線より低い位置にあり、色面が見やすいとは言えません。

 色は安全色の赤よりも暗い赤色が一般的です。さらに間取り上、トイレのドアの近くに大きな窓がない場合が多く、照明が必要なところもあります。残念ながら、住まいのトイレドアの表示錠は、色を見分ける条件が整いにくいようです。

 ある色弱の男性は「トイレのドアの錠に色が表示されているとは思わなかった」と話しています。

 建築やインテリアは、工業製品の組み合わせでできています。「明るい赤を使いたい」「色面が大きいものがほしい」と考えても部分的に加工するのは困難です。製造メーカーには「この色はどの人にも伝わる色だろうか?」と問いながら色彩を決めてほしいと考えます。

 ある劇場のトイレで、個室のドアが開くと吊り元側の上部にハガキ大のプレートが立ち、空室になったことを知らせてくれる場面に行き合いました。色以外で知らせるアイデアに、心の中で大拍手です。このような、色に依存しない情報の伝え方で、住まいのトイレの解錠を知らせる方法があったらうれしいのですが、住宅のトイレドアは閉じているのが基本なので、ちょっと難しそうです。

(北海道建設新聞2021年9月9日付3面より)


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