雪害家屋修繕でフル稼働 岩見沢市内の建築業者

2021年09月14日 10時00分

「雪が降り始める前のここ1、2カ月が勝負」

 2020年度冬の記録的な大雪に伴う雪害で、岩見沢市内の建築業者や板金業者などは連日フル稼働で家屋の修繕に当たっている。特に屋根や外壁の損傷が多発。地元業者は緊急性があるものを最優先しながら、例年の数倍に上る工事量をこなして対応しているが、人手不足もあり、一部については来春以降に先送りせざるを得ない状況だ。(空知支社・荒井 園子記者)

 岩見沢市によると、20年度の最大積雪深は2月25日の205cmで、3月末までの累積降雪量は前年度比440cm増の944cmに上った。最大積雪深の205cmは、11年度に記録した208cmに迫る観測史上第2位だった。20年12月22日の142cm、21年3月2日の195cmは各月の観測史上第1位を記録した。

雪の重みで岩見沢市内中心部の空き店舗は屋根が落ち、壁が崩れた

 岩見沢商工会議所、いわみざわ商工会、岩見沢建設協会で構成する岩見沢プレミアム建設券事業実行委員会が申し込みを受け付けていた21年の同建設券は、雪害などで当初予定の1万800口を大幅に上回る1万9178口の応募総数となった。特に屋根・外装は前年比2倍の836件で、工事見積額は8億7867万5000円に達した。11月30日までの工事完了期限に間に合わないというキャンセルも4件発生し、同商議所の松浦淳一会頭(松浦建設社長)も現場の苦労を把握。9月末までに期限内の工事完了が可能かどうか調査を進める予定だ。

 津島工業(本社・岩見沢)では、雪害による修繕が例年10件未満だが、ことしは50―60件を受注。主に屋根の軒先折れや曲がり、陥没、外壁のへこみなどの修繕で、津島治光社長は「現時点で半数は消化。雪が降り始める前のここ1、2カ月が勝負だと思っている」とし、緊急性のない一部の工事は来春以降にする考えだ。

 雪害による修繕の件数について「市内全体で1000件程度あるのでは」と推測するのは、赤間板金(本社・岩見沢)の赤間年幸社長。雪解け後から100件程度の問い合わせを受け、そのうち60件を受注。例年は10件前後の受注で推移しているが、「コロナ禍によるリフォーム需要の減退を懸念していたところに、工事の依頼が殺到。できるかぎり雪が降る前に完了させたい」と考えている。

 高橋工務店(本社・岩見沢)でも雪害による修繕は例年の2倍の件数を受注。三角屋根の先折れ、落雪による外壁破損やガラス割れ、フード破損、外壁サイディングの剥がれなどで、工藤豊社長は「雪害による工事優先で、急を要しない仕事を来春以降に進めるよう調整を図っている」と話す。

 例年の何倍もの業務をこなす上で課題となってくるのが、人手不足だ。赤間板金は2月から求人し、トータル25万円の広告代金を投じているが、いまだ入社ゼロが続いている。協力会社に頼んで作業員1人を確保したほか、営業職の職員が現場に出向き作業を手伝ったり、赤間社長が営業を担当することで人手不足を補っているという。高橋工務店はベトナム外国人実習生が3人おり、工藤社長は「人手不足の中で力を発揮してもらい、助かっている」と話す。

 今夏は市内でも30度を超える猛暑が連日続いた。屋根の板金の温度は60度前後に到達。作業が過密化する中、熱中症対策で20分おきの休憩や空調作業服の着用などに配慮した。資材価格の高騰も続き、常に先を読みながら仕入れしなければならない状況も続いている。今、地域住民に安心・安全な生活を届けたいという思いが、地元業者を突き動かしている。

(北海道建設新聞2021年9月11日付1面より)


関連キーワード: 建築 空知

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 北海道水替事業協同組合
  • オノデラ
  • 川崎建設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,372)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,288)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,279)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,072)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (987)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。