超長距離の実証実験にも成功
コベルコ建機(本社・東京)は2022年度、数百mという近距離での遠隔操作システムのサービス展開を始める方針だ。同社は9月中旬、超長距離・多接続切り替えの遠隔操作を北海道総合通信網(同・札幌、HOTnet)と共同で実証実験し成功させた。札幌市内のコックピットから帯広市と広島市にある現場の建設機械を操作し、場所を切り替えながら作業した。来年以降、より離れた遠隔操作の段階的なサービス展開を目指していく。
遠隔操作には通信環境やカメラなど一定の設備が必要となるため、サービス初期の運用場所としては土木のような一時的な現場よりも、社内ヤードのように定常的な拠点を想定する。実際に昨年11月からは産業振興(本社・東京)のスクラップヤードで近距離操作の検証を続けている。提供形態や価格帯は検討中だ。
コベルコ建機は建設現場のテレワーク化を目指し、遠隔操作とクラウドマッチングを融合させたシステム「K―DIVE CONCEPT」を推進。今回の実験はその一環だ。クラウドマッチングシステムは操縦者と現場をマッチングする仕組みを指し、研究開発を進めている段階。
実証実験では同社が市販する油圧ショベルに専用システムを載せ、建機や現場にカメラを設置。操縦者はコックピット6画面に映された現場映像を見ながら、帯広と広島のショベルを交互に操作した。
両地点は札幌からそれぞれ300㌔および1800㌔離れているが、実際の操縦席での操作と比べてもタイムラグをほとんど感じずに動かせたという。日本マイクロソフトと共同開発中の遠隔操作システムを活用した。
帯広とはHOTnet所有の光ファイバー網で結び、広島とは他にNTTコミュニケーションズ(本社・東京)など複数企業の光ファイバー網とも連携。稼働データはHOTnetが札幌市内で所有するデータセンターに蓄積し、そこからコベルコ建機のデータ管理システムにも接続した。
コベルコ建機とHOTnetは昨年9月に遠隔操作に関する開発協定を結び、札幌市から帯広市の建機を遠隔操作する実証実験をした。今回は距離や台数、光ファイバー網を増やしてより高度な実用性を確かめた形だ。
(北海道建設新聞2021年9月28日付1面より)