深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 共和コンクリート工業 本間丈士社長

2021年10月04日 18時00分

本間丈士社長

ノウハウ融合 可能性生む

 土木用コンクリートブロック製品の企画製造で全国展開する共和コンクリート工業(本社・札幌)が7月、新潟県長岡市を本拠とする電炉鉄鋼メーカー、北越メタルとの業務提携を発表した。両社は今夏発足した合弁会社にノウハウを持ち寄り、高付加価値なRC部材などの生産、研究開発を手掛ける。共和コンクリート工業の本間丈士社長(64)に提携の狙いと自社事業の展望を尋ねた。

 -鉄筋の専門企業とタッグを組む背景は。

 コンクリートブロックについて言えば、1990年代以降の公共工事減に人口減が加わり、市場は縮小傾向にある。その一方、近年は都市インフラ老朽化を受けて全国的に補修工事が増えてきている。現場の人手が足りない中、工数を減らすのに役立つのがプレキャストコンクリートだ。近年は大規模なコンクリ構造物もプレキャスト化していて、鉄筋を入れた大型コンクリ部材の需要が伸びている。当社としては、鉄筋に関わる製品の供給力、企画力を高めるのが提携の大きな狙いだ。

 -RC部材などで鉄筋は元々近しい領域。すでに知見があるのでは。

 われわれはコンクリートについて知っている半面、鉄は専門ではない。当社グループには鉄筋加工会社も複数あるが、専らグループ内からの受注で仕事をしていて、そもそも発注内容が本当に合理的なのかという部分は追求できていなかった。今回は鉄を学ぶ絶好の機会になる。

 -どんな経緯で提携に至ったのか。

 3年ほど前、両社とつながりのある金融機関がアイデアを持ってこられたのが始まりだ。北越メタルの方は鉄鋼メーカーの事業環境が厳しくなる中、ユーザー側の視点を取り入れて事業を再構築する川下戦略を強化していて、その延長線上に鉄筋コンクリートの領域があった。2社は接点がなく、仲介で初めて知り合った。当社を含めて事業会社は普通、業界外の事情には詳しくない。産業を俯瞰(ふかん)している金融機関ならではの発想だったと思う。

 -実現に少し時間がかかったようだ。

 コロナ禍で話し合いのペースが遅くなったのが理由で、協議は順調だった。今回のような提携ではそれぞれの企業文化の相性も大事な要素で、互いに新潟、北海道の工場を訪ねた。私も実際、先方の現場社員が製鉄のプロセスを生き生きと説明してくれるのを聞いて、現場重視、風通しのいい企業文化で2社に大きな違いはないと感じることができた。

 -8月に合弁会社「イノヴァス」がスタート。貴社の出資比率は49%だが、経営は北越メタルが主導するのか。

 そうではない。資本面での最終責任が曖昧では困ることから今の形にしたが、登記は当社の東京本社内で、代表取締役の1人も当社から出している。2社に上下関係はない。

 合弁会社は業務を始めたばかりで、まず双方の仕事のやり方、業界事情について意見交換をしている。今後、新製品の構想なども具体化する。「小さく産んで大きく育てる」のスタンスだ。

 -グループだけで考えるとどうか。国内で工事のボリューム拡大が見込めない中、コンクリ製品でどう成長するのか。

 先ほど申し上げたプレキャストコンクリート製品が軸になるだろう。建設工事のプレキャスト採用率は欧米では約3割、特に北欧ではほぼ半数とされているが、日本ではまだ14%、北海道では12%にすぎない。少子高齢化の中で省力化・工期短縮に貢献できる工法で、今後の拡大余地は大きいと考えている。

(聞き手・吉村 慎司)

 本間丈士(ほんま・たけし)1957年4月、札幌出身。82年慶応大大学院工学(現・理工学)研究科修了。経営コンサルティング会社勤務を経て84年共和コンクリート工業入社。94年に代表取締役社長就任。全国土木コンクリートブロック協会会長なども務める。

(北海道建設新聞2021年09月29日付2面より)


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