変わるまちの玄関口
KIECEでも駅前の整備が進む。バス待ちや車から降りて駅へ向かう人が行き交う朝のJR野幌駅。高架化により駅前広場が整い、利便性が向上した。恵庭市は、島松駅周辺で高まる住宅需要を好機と捉え、駅舎と駅前広場の整備により後押ししたい考えだ。JR沿線各市、駅前整備を起点にまちの発展に取り組んでいる。
この10年で、野幌駅は生まれ変わった。顕著なのは南口だ。観光客やビジネス客向けに65部屋を備えるホテルリボーン野幌、市民活動センターや国際センターの窓口などを置く市民交流施設ぷらっとがシンボルとして並ぶ。路上駐車やバス停散在などが課題だった駅前も、ロータリーの完成で各車両のスペースが明確になり、車両と人の動線が確保された。

JR野幌駅南口の様子。平日の朝は通勤・通学で送迎の車が目立つ
これらは江別の顔づくり事業として2006年度の都市計画決定を受け実現。5年後の11年10月には駅が高架化し、景色は大きく変わった。
JR函館本線で分断されていた南北がつながり、スムーズな移動を実現。その後、14年12月に北口、19年3月に南口の駅前広場を供用開始した。事業を担当する江別市開発指導課の中住弘樹参事は「北口には既成の市街地があったが、利便性が高まったことで南口も市街地形成が進んだ」と話す。
顔づくり事業の効果で、南口側は高架化した11年度以降、宅地造成が活発化。緑ケ丘地区で13、15、17年度に計165区画、野幌若葉町は18年度に174区画をそれぞれ完了している。需要の高さは、21年7月1日時点の道の地価調査でも表れ、野幌東町43の16の住宅地が、昨年の3万8300円から4万4300円に上昇。今後も期待が寄せられる。
野幌駅に続く江別市内主要駅の一つが江別駅。駅の近くには16年3月に閉校した江別小の跡地約2・3haがあるものの、未利用の状態が続く。
17年度に実施した市場調査では、オフィスビルやマンション建設は難しいものの、戸建ては可能性があるという提案を受けた。現在も市は民間事業者から利活用に関する意見を受け付けている。事業化によって駅前を活性化させたい考えだ。
このエリアを走るもう一方のJR千歳線に目を向けると、恵庭市の大槻雄二企画振興部長は「いま、市内でも島松地区に目が向けられている」と話す。
北広島市に隣接する島松地区。島松駅は、駅舎のバリアフリー化や駅前広場整備の計画を持っていて、住宅や店舗が並ぶ東口の駅前広場に加え、西口に広場を新設するほか、東西を結ぶ自由通路を架け換える。
駅を取り巻く環境は変わり始めていて、スーパーセンタートライアルが西口に17年12月に開業したことで、周辺には住宅が徐々に増加。駅から徒歩圏内の島松寿町1丁目でも民間の宅地造成が進んでいる。
21年9月末の島松地区は4366世帯だが、10年前の11年9月末は4277世帯と、現在より89世帯少なかった。駅前開発や住宅需要がまちづくりにどのような効果を与えるか、同地区の動向が注視される。
北広島市の北広島駅、千歳市の千歳駅も駅前を再整備する計画があり、北広島市は北海道ボールパークFビレッジ建設による新駅の構想も抱える。駅前の整備を終えたまちは、その効果をまちづくりに波及させたり、手を加えたりと進化を続けている。便利になれば暮らす人や訪れる人が増加し、にぎわいが生まれる。KIECEの玄関口に期待したい。
(北海道建設新聞2021年10月6日1面より)