KIECEの台頭

札幌近郊5市 経済けん引へ

 北広島、石狩、江別、千歳、恵庭の5市が、道内の新たな成長地帯として浮上してきた。ヒト・モノ・カネが道央に流入する中、札幌市中心部の土地不足などを背景に、企業や移住者が周辺市に向かう構図だ。単なる札幌のベッドタウンではなく、本道経済のけん引役に育つ可能性もある。本企画連載では5市が位置する一帯をそれぞれの頭文字の組み合わせから「KIECE(キース)」と総称し、近年の成長ぶりと潜在力を検証する。(5回連載します)

KIECEの台頭 ネクスト札幌の成長地帯[キース](4)土地割安も造成余地少なく

2021年10月11日 09時00分

住宅需要、札幌から再流入

 札幌市からあふれた住宅需要がKIECEへと流れている。道が9月に発表した基準地価(2021年7月1日時点)によると、住宅用地で北広島市、恵庭市、江別市、石狩市が道内の上昇率上位10地点のうち9地点を占めた。千歳市を含めて2桁の伸びを見せる地点が多く、コロナ禍であっても宅地販売は好調だ。

 札幌市街地から北に車で約30分。27年前に分譲が始まり、バブル崩壊後の低迷にも見舞われた石狩市の「緑苑台ニュータウン」がここに来て存在感を増している。タウン中心部、緑苑台東1―3条街区内を走る延長約600mのシンボルロード両脇では、建設中の戸建てがあちらこちらで目に付く。03年に新居を構えた男性(50)は「更地だった場所に、ここ10年で家が建ってきたが、最近勢いが増している」と驚いていた。

緑苑台のシンボルロード両脇では住宅新築が相次いでいる

 全体で1045区画(9月現在)規模の緑苑台は三菱地所と住友不動産が開発、販売を手掛けている。札幌近郊でゆとりある住居が建てられるよう、標準で1区画297m²、660m²の大型区画も設けた。バブル崩壊のあおりで低迷期が続いたが、05年にイオン石狩緑苑台ショッピングセンターが開業したことなどを機に、販売を伸ばしていった。

 だが、エリア内で多くを占める標準区画が順調に売れる一方で、シンボルロード両脇の大型区画は苦戦していた。三菱地所の担当者は「区画割りが今の時代に合っていないのか、年に1区画売れる程度だった」と振り返る。

 状況が一変したのは、緑苑台東3条側にある大型区画を標準よりやや小さい264m²に区割りし直してからだ。宅地が高騰する札幌市内で戸建てを諦めた人たちが、石狩に目を向け始めていた。20年11月に17区画を試験的に分譲販売したところ、年内で完売。この好感触を受けてことし6月下旬に35区画を売り出し、現在までに9割が成約した。

 購入者の多くを若いファミリー層が占める。「1坪(3・3m²)10万円程度で広い土地が取得でき、今では珍しく建築条件が付かない点が注目されたのでは」(三菱地所担当者)。今後、緑苑台東1、2条側の宅地についても同様にサイズを小さくして分譲することを予定。バブル崩壊で止まっていた時計の針が再び動き始めている。

 恵庭市内にあるJR島松駅徒歩約7分の一帯に、新しい街が誕生する。不動産業の玉川商事(本社・恵庭)が島松寿町1丁目地区で宅地開発した総区画70区画の「フローラルタウン島松寿町」。ことし5月に、住宅事業者9者が建築条件付きで55区画を販売し始めた。

 1区画200―235m²で平均坪単価は7万円程度。売れ行きは上々で、既に6割程度の成約があるという。市外、道外からの購入も多く、年齢層もさまざま。駅近で割安な土地価格と、札幌や新千歳空港への交通利便性の高さが人気を集めている。

 順調に移住・定住が進むKIECEだが、住宅事業者からは「もう市街化区域内で宅地造成できる場所はほぼない」といった声が多く聞かれる。札幌のように宅地が足りなくなり、土地価格の急上昇が続けば、いずれ販売にも影響しかねない。北海道不動産鑑定士協会代表幹事の斎藤武也氏は「宅地はこれまで、札幌から近郊に広がっては都心回帰する動きを繰り返してきた」と指摘する。

 市街化区域の拡張は今後も見込めず、宅地の供給不足が続く公算が高い。老朽化が著しい住宅団地を集約して宅地を生み出すなど、街の再生につながる方策が求められる。

(北海道建設新聞2021年10月7日付1面より)


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(この連載は経済産業部の吉村慎司、武山勝宣、宮崎嵩大、建設・行政部の瀬端のぞみが担当しました)

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