新商品、既存との差別化を
よい商品、よいサービスを作り上げたとしても、そこに市場がなければ、商売は成り立ちません。エコ、SDGs、デジタルなどといった時代を捉えた言葉は多様にありますが、それ以前に商品そのものを必要とする人がいなければ、買ってもらうことはできません。
コロナ禍において、新たな事業を始める必要性を感じている方は多くいらっしゃいます。コロナ以前から、社会は変革の中にあり、コロナ禍によってそれが加速しているようにも感じます。しかし、そのときにマーケティング視点が明確に確立できていないことがあります。
新規事業を行いたく、補助金を受給したいというご相談をよく承ります。新しい商品はどのようなものか、それをどのように作ろうと思うのかについては、多くを語っていただけます。一方で、どのような人に対して、どのように販売していくのかについては、途端に口数が少なくなることも間々あることです。よい商品を作るのだから売れるのだという言葉は、第三者に対しては説得力がありません。
商品、サービスを販売する方法を考える際に必要なことの一つ目は、類似する既存の商品やサービスがどのようなものかを把握することです。そして、もう一つが、自社の新たな商品やサービスが既存のものとどのように異なるのかを明確にすることです。
将来の競合相手がどのような戦略で商品やサービスを販売しているのかをつぶさに研究します。誰に売ろうとしているのか、いくらで売っているのかといった個別具体的な販売戦略を検討するほかに、市場規模はどのくらいの大きさであり、どのような企業がその市場に参入しているのかといった抽象的な事柄までを調査します。
そのようにして、既存事業者がどのように経営をしているのかを把握した後に、自社商品の差別化方法を検討します。競合調査の結果、需要はあるにも関わらず既存商品が存在しないことが分かれば、買いたい人に届ける方法を検討すれば足ります。しかし、多くの場合は既存商品が存在します。その場合は、自社の新規事業が既存商品とどのように違うのかを分析し、その違いによって、どのような顧客を得ることができるのか、それをどのように顧客に見せればよいのかを吟味します。もし差別化ができないのであれば、差別化が可能となるように商品を再構築することも考えられます。
差別化が実現でき、優位性を見いだすことができれば、優位性に応じた販売価格の上昇を見込むことができます。既存商品より価値が増加した分だけ価格も増加し、ひいては売り上げも増加します。
マーケティングの観点を身に付けることで、価格競争に陥らない商品力を身に付けることができると思うのです。
(北海道建設新聞2021年10月7日付3面より)