グッドデザイン賞受賞経験も
1961年創業の北海鋼機(本社・江別)は、建物の屋根や外壁に使われるカラー鋼板を作る鉄鋼2次製品メーカーだ。道内でカラー鋼板の製造設備を持つ唯一の会社として、耐候性や滑雪性を備えた鋼板の流通を支えている。床型枠用デッキプレートも製造するなど建物の床から屋根まで携わる点が特長。人口減に伴う市場縮小を背景に新たな需要開拓にも取り組む考えだ。社員数は87人で、うち50人弱が製造現場で働いている。
同社の主力事業は、昨春から扱う「雪印カラーSGLネオ」をはじめとしたカラー鋼板の製造だ。親会社の日鉄鋼板(本社・東京)から原材料として10㌧サイズのコイルを購入し、自社工場で塗装している。塗装と焼き付けを2回ずつ交互に進める製法で品質確保を図る。
塗装した鋼板は2―2・5㌧ほどのサイズに切断した上で専門商社や総合商社に納める。ほとんどが道内で使われているという。業界では雪印の名前を縮めた「ユキ」の愛称で定着しているブランドだ。
道内唯一の生産拠点として急な案件にも対応しやすい利点があり、道内ではトップシェアを確保している。
カラー鋼板の用途は屋根や外壁、ガレージシャッター、看板などさまざまで、取り付け場所も住宅、学校、商業施設など多岐にわたる。色の種類は特注品も含めるとおよそ100色を提供している。道内では同社を含めて4社がカラー鋼板を供給しているが、営業部の原口佳己担当部長は「街で見かけたときは色味を見ればどのメーカーの製品か分かる」と話す。
以前は鋼板の原板としてガルバリウム鋼板を使っていたが、昨年から日鉄鋼板の新たなめっき鋼板「エスジーエル」(SGL)を扱い始め、今ではほとんどがSGLだ。マグネシウムを添加して従来よりも耐食性を大幅に強化した素材だ。
意匠性へのこだわりも併せ持つ。16年に外壁材製品がグッドデザイン賞を受賞したほか、建築作品などのデザイン性を審査する北海鋼機デザインアワードを日本建築家協会(本部・東京)北海道支部と数年おきに共催。今年は第5回を開催中だ。金属製品を使っている作品を幅広く審査・表彰し、鋼板などの普及に貢献する狙いがある。
安全意識も高く、無災害日を4000日以上という長期にわたり続けている。これには18年から始めたRA活動も寄与しているという。「Remember the Accident(事故を忘れるな)」の頭文字を取った名前の通り、過去に起こった事故などを毎月のテーマに設定して、互いに注意を促す活動だ。
売り上げは、コロナ禍に伴う新設住宅着工の減少を受けて昨年の春から秋にかけて伸び悩んだが、その後は回復基調だ。角田洋一社長は「足元は忙しい状況が続いている」と話す。21年度の売り上げは値上げの影響もあり、昨年の46億円を上回る見込みだ。
一方、コスト高や需要減という構造的な課題にも直面する。高炉メーカーの製品値上げを受けてコストは上昇が続く。北海鋼機も昨秋から値上げし、10月からはカラー鋼板で1㌧当たり6万5000円の上げ幅とした。他製品も値上げが続いているという。
需要減という課題もある。同社のカラー鋼板の供給先は住宅が非住宅よりも多いが、人口減を背景に道内の新設住宅着工戸数は減り続けているのが実情だ。さらに、屋根が三角から平らな形へシフトした影響などもあり、1棟当たりの鋼板使用量は大きく減っている。
直面する課題に対応しながら、いかに売り上げやシェアを確保して今後も道内の鋼板流通を支えるか。角田社長は「新製品の開発やシェア拡大など、新しい需要を開拓したい」と先を見据える。
(北海道建設新聞2021年10月9日付3面より)