クリエイターや企業呼び込む 東神楽大学を成長の場に

2021年10月17日 10時00分

Agri Innovation Design脇坂社長インタビュー

 「地元だけでまだまだ何でもできる」と話すのは、Agri Innovation Design(本社・東京)の脇坂真吏社長。東神楽町の地元産の野菜や果物を用いた製品の開発や販売をプロデュースしてきた経験を生かし、廃校となった校舎を「東神楽大学」として再生するプロジェクトに新たに着手する。クリエイターや企業を呼び込んで「世界のトップを走る方々と触れ合う」場所をつくることで、人材や地元資源が一層活用できると展望を語った。(旭川支社・松藤 岳記者)

 ―農業に関わる仕事に就いた動機は。

 元来興味があったわけではなく、大学に進学してから農家の手伝いに行ったときに転機があった。山梨で魅力的な作物を作っている人だったのだが、「農家はもうからない仕事」と自虐的に言っていたのが印象的だった。

 今の会社のテーマは「小学生のなりたい職業1位を農家にします」で、農業を素敵な産業にする。実際に輝いている農家の方も多いので、それを知ってもらう活動が始まりだ。

 ―東神楽町のポテンシャルは。

 まず空港が近く、発着が安定していることだろう。道外の企業にはこんなに近いのかと驚かれる。何より観光地として有名な美瑛や富良野が近隣にあるため、ワーケーションに取り組みたい企業には最適だ。

 6年前に農業プロデューサーに就任してからは町の農家と野菜の自主的な出荷や販売をする直販所を作り、地域商社として町産のイチゴを原料にしたジャムなど新商品の開発にも取り組んできた。発送用のパッケージもデザイン込みで地元の企業が製作した。地元だけでまだまだ何でもできる可能性がある。

 東神楽大も町内の事業者と連携して進めるのが前提だ。地域商社も構内にオフィスを置く予定だし、私の会社も東京に本社があるが、コロナ禍でテレワーク環境も整ったため移転も検討している。

 ―東神楽大の事業展望と課題は。

 住みやすく、農業や食の面でも優れた町だし、6年間農業者と交わってきた経験からも資源は豊富にあると考えている。一方で、地方と都市の教育格差、機会の少なさがネックだと感じる。地元の方が成長したいと考えたとき、東神楽大が学びのきっかけになる場所にもしたい。

 このプロジェクトを象徴する取り組みがクリエイターカレッジだと考えている。芸術や動画配信に良い環境で創作に打ち込んでもらうだけでなく町民向けのセミナーも開く。世界のトップを走るクリエイターと触れ合うことで双方に良い影響が出れば良いと思う。

 10年という長期的スパンの事業は初めて。町民にも外部の事業者にも、さまざまな形で変化を見せられることが一つの魅力になる。ダイナミックに東神楽町が変わるタイミングを見せられる場所にしたい。

ベンチャー立ち上げ活動

 脇坂社長は1983年生まれの37歳。東京農大在学中からベンチャー企業を立ち上げるなど活発に活動し、卒業後2011年にAgri Innovaision Designを設立。全国でマルシェ事業を展開してきた。父の出身地でもある東神楽町との関わりも深く、16年には農業プロデューサーとして地元農業者の自主流通・販売、新製品開発などをサポート。新プロジェクトの東神楽大では旧忠栄小を改修してクリエイターの創作やセミナー、シェアオフィス、キッチンといったさまざまな用途の建物に再生する計画だ。

(北海道建設新聞2021年10月13日付12面より)


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