緊急事態宣言は解除され、飲食は再開となりました。しかし、コロナ禍が完全に収束したわけではなく、ウイルスはどこかに必ず潜んでいます。変わらずの感染対策が求められます。なぜ、コロナ禍の飲食が感染源とされ、実際、クラスターを頻発させたのでしょうか。あらためて、振り返ってみましょう。
飲食店の中でも接待を伴う飲食店でのクラスターは、昨年の秋から今年の冬にかけて非常に頻発しました。しかし、よく調べると、業態に差があって、高級クラブ、小規模スナックにはあまり起こらず、キャバクラとホストクラブで頻発していました。こうした業態の店では、お客さんが、接待している人がマスクをしていることを快く思わず、フェースシールドを使っているので、ほぼ無防備でした。自分は感染していないという根拠のない自信のせいです。
そして、窓がない店が基本であり、相当に換気が悪かったと思われます。そこで、ご機嫌になったお客さんがマスクなしで大声でしゃべり、カラオケをやり、若手は一気飲みを繰り返したのです。これでは、ひとたび無症状感染者が入り込めば、一気に感染が広がります。
しかし、これは飲食をする人たちの平均的な行いとはいささかかけ離れています。というわけで、飲食一律の時短要請に私は反対でした。もっと、業種を絞り、その業種の方々とよく話をして、要請をかけるべきでした。なぜ時短要請をするのか、理由があいまいになったので、クラスター発生の原因が理解されませんでした。飲食店でなければ大丈夫と、別な場所でクラスターが頻発するようになり、この冬以降の第4波、第5波の最大級の感染拡大を招きました。
もうすべては明らかです。ただ飲食、特に宴会は、感染対策とワクチン接種を進めれば、全く問題がないのです。換気を確保して、手洗いを徹底して、大声で自慢話と周りに威張ることをしなければ、感染は拡大しません。説教もいりません。威張りたければ、マスクをしましょう。接待している人に、いろいろ強要するのはやめましょう。カラオケは人のいない方向に普通に歌えばいいのです。一気飲み、けんか、口説きはやめましょう。完全酔っぱらいは危険です。こういうことはコロナ禍でなくてもご法度です。
もういい加減、飲食店のせいにするのはやめましょう。飲食店のせいにする当局も考えが浅く安易です。反省が必要です。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)