「ハイスペック人材」提供で差別化
エンチャント(本社・札幌)は、外国人技術者の人材派遣事業を手掛ける。特長は派遣人材が「技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国ビザ)を取得するミャンマー人」という点だ。人材不足を補う外国人技能実習制度の活用が主流の中、〝ハイスペックな人材〟の提供で差別化を図る。
同社は、道内を中心に展開するネイルサロン『エーナイン』など美容事業を主力とするピスタ(本社・札幌)が設立。新型コロナウイルスの影響を受けて新事業を模索していたところ、東京などでミャンマー人材派遣業の実績があるエンチャントの渡部和博社長らと知り合いだったことから3月に立ち上げた。
エンチャントが紹介する人材は、在留期間の制限がない技人国ビザを持つミャンマー人。国立技術系大学を卒業し、日本語能力試験2級合格程度などを基準に設ける。企業が求める保有資格や経験をもとに人材を紹介し、面接を経て派遣が決まる。
来日から出入国の手続き、引っ越し、銀行口座や携帯電話の手続きなどを同社がサポート。基本の月額料金は40万円からで、運転免許の資格やキャリアによって値段が変わる。派遣契約終了後に直接雇用となる場合も紹介料はかからない。
同社はミャンマー人材の魅力を、数年で母国に帰国し、日本語習得が未熟なまま来日する場合もある技能実習制度と比べ、長期雇用が可能で基本の学力や語学力のレベルも高いと指摘。人材は特定非営利法人日本ミャンマー交流協会や現地の日本語学校など豊富なネットワークを活用するので、両国からの紹介が可能だ。
そもそもミャンマーの大学では、土木含む建築工学を学ぶのが一般的。両工種の知識を持つほか、授業は英語での実施がほとんどのため、英語にも比較的対応できるという。
また、国民の9割が信心深い仏教徒。年上を敬い、年功序列を意識するなど日本人と価値観が合いやすい。公用語であるミャンマー語は日本語とほぼ同じ語順で、日本語の上達は早いといわれる。
一方で、大学を卒業してもミャンマー国内では学んだ技術を発揮できる場が少なく、シンガポールや韓国に人材が流出。国内の平均月給は2万円ほどで、技人国ビザの技術者でも5万―10万円程度といわれている。
しかし、日本で働けば20万円以上の給与が見込め、ミャンマー人にとっても高給で学んだ技術を生かして知識やスキルアップを図れる日本への憧れは強い。同社営業部の白石綾子さんは「多くの優秀な人材を生かしきれていない宝の持ち腐れ状態」と話す。
7月からこれまでに14人の派遣が決定。道内では札幌市内の建築や土木の企業2社で計4人、11月から順次各社で業務を始める予定だ。
渡部社長は、人手不足の建設業界では技能実習生などは単純労働力であるワーカーが主力だったが、国内でも施工管理者不足の声が大きい現状を挙げ、「今後は外国人材の優秀なエンジニアを選択の一つに」とアピールする。
(北海道建設新聞2021年10月20日付3面より)