北5東1区は接続性必要
北海道新幹線札幌駅の東改札口整備が具体化してきた。札幌市はJR北海道と鉄道建設・運輸施設整備支援機構に設置を請願する方針を固めた。実現すれば、在来線の駅がある西側と比較して閑散とする創成川東側への新たな人の流れが見込め、周辺で再開発計画を進める事業者などから期待の声が上がる。東改札口が目の前となる北5条東1丁目街区周辺は民間未利用地が依然として残り、新幹線駅と接続性を生み出す施設開発が求められる。

東改札口の設置予定地前には、未利用地が残る北5条東1丁目街区がある
東改札口を設置する北側の北6条東2丁目街区では、札幌総合卸センター跡地を活用した再開発が進む。
ホテルを新築する大手カタログ通販のベルーナ(本社・埼玉県上尾市)は、東改札の設置を「ホテル利用者のアクセス性向上だけでなく、東側の発展などさまざまな相乗効果が期待できる」と歓迎。同じ街区で分譲マンションを手掛ける大京(同・東京)も「マンション近くに新幹線の改札口があれば好印象になる」と話す。
北海道新幹線札幌駅は北5条西1丁目街区側に建設し、ホーム位置は創成川をまたぎ北5東1街区まで及ぶ。当初、改札口は駅側1カ所としていたが、市は創成川東地区との連絡や回遊性を生み出すため東口改札の検討を進めてきた。さらに、北5西1街区に新築する再開発ビルと北5東1街区をつなぐ、創成川上空を利用した空中歩廊も構想。人の流れを東側に誘導して、まちづくりへの相乗効果を図る。
しかし、新幹線の玄関口となる北5東1街区は、青空駐車場やレンタカー店舗などがある程度。創成川西側と比べ、にぎわいがあるとは言い難い現状にある。不動産関係者らからは「せっかく改札口やデッキを作っても、その先に魅力的なものがないとその効果を発揮できないのでは」という声が聞こえる。
市もこうした状況を認識。権利者意向などを踏まえた土地利用の方向性や、課題整理をするための支援業務を2019年度から進めている。
1日の市議会総務委員会では東改札口の検討状況を報告。北5東1街区についても触れ、市まちづくり政策局の高橋秀士札幌駅交流拠点推進担当部長は「市としても地権者と情報交換するなど、開発実現に向けて対話を続けてきた」と説明した。今後、東改札口整備が具体化することからも、歩行者道線や施設配置などと整合の取れた開発計画となるよう、引き続き地権者に働き掛ける考えだ。
東改札口と空中歩廊の設置について、周辺で不動産を保有する事業者などの関心は高い。北6条東1丁目街区で札幌中央郵便局を運営する日本郵政は、「数年前に大規模改修し、当面は引き続き使用することにしているが、新幹線延伸による周辺のまちづくりの動向を注視している」と明かす。
北7条東1丁目街区にあるサッポロテイセンボウル・テイセンホール跡地で新施設を構想する帝国繊維(本社・東京)も「事業化すればメリットはある」とし、30年度末の新幹線札幌開業に向けて計画を進める姿勢だ。
新幹線の乗客を受け入れるには、2次交通の乗り継ぎ機能も必要になる。市は交通広場整備や歩行者空間拡充などを検討しているが、車の乗り入れなどを勘案すれば、高架下の鉄道構内だけでは狭く限界がある。
創成川東側で再開発事業に関わってきた、まちづくりコンサルタント・ノーザンクロスの担当者は「鉄道敷地内に接した民間の敷地などを活用し、駅と接続性のあるビルや、車両が乗り入れられる施設を造る必要がある」と指摘。創成川を挟んだ東西の拠点を結ぶためにも北5西1街区側、北5東1街区側の両地権者が連携し、再開発計画を進めることを提案する。
(北海道建設新聞2021年10月27日付14面より)