新人同士による12年ぶりの選挙戦を制し、9月25日付で就任した渡辺英次士別市長。人口が減少していく市の現状に危機感を持ち、地域経済の活性化を最優先事項として掲げている。市内事業者の生産力強化などを目指す渡辺市長に今後の抱負を聞いた。(旭川支社・沓沢 奈美記者)
―立候補を決意した経緯は。
市内は人口減少が進んでいる。このままだと士別が疲弊していくという懸念があり、若い世代に疲弊した状態を引き継ぐわけにはいかないと思い立った。
―就任の抱負は。
まず、経済を活性化させるための仕組みを作っていきたい。環境省のツールである地域経済循環分析を使って、経済状況を分析し、結果を基に政策に反映していく。
市では住宅の新築に対する補助事業を実施している。市内で地元業者に依頼して住宅を新築すれば、施主は100万円がもらえる仕組みだが、お金がどこで使われるかが大事だ。今は施主と施工業者の両者にしかメリットがない仕組みになっている。補助を頂いた方が市内で家電などを買えば、市内事業者のお金になる。そこまで踏み込んだ政策をする。誰かの支出は誰かの所得になる。市内でお金を循環させたい。
私は仕組みを提案する側だが、実際につくるのは市役所職員たち。管理職と同じくらいの年齢の首長なので、トップダウンだけではなく、職員の能力を生かせる職場づくりにも力を入れていく。
―公約に挙げた産業の強化に向け実施したいことは。
人手の確保や育成、業務の省力化などに力を入れる企業には、行政として支援をする。市内では一企業の従業員数が減り、生産力が弱くなっている。今後の仕事量が見込めないので投資ができないし、仕事が重複すれば他の企業に外注してしまう。市外にお金を逃がさないため、生産力を上げたい。
―今後の社会資本整備に関わる計画や考えは。
新しい施設を建てるというより、現存するものの長寿命化を進める。市では財政状況の厳しさから、今後のインフラ整備に関わる計画を示すことができなくなっている。しかし全く示さないと企業は投資ができなくなるため、継続的な発注は必要だと思う。
都市部と地方にインフラ整備の差があれば、一極集中は解決できない。財源が確保できるよう国に要望するのも市長の仕事だと考える。
渡辺英次(わたなべ・えいじ)1972年9月18日生まれ。士別市出身の49歳。士別高卒業。前職は市議会議員を務める傍ら、個人事業主として建設業を営んでいた。
(北海道建設新聞2021年10月27日付12面より)