会員登録制、セルフレジ、防犯カメラも複数台
衣料品卸の竹栄(本社・札幌)は11月1日、完全無人の衣料品店「Manhattan store Mujin」を札幌市内にオープンする。同社によると衣料品の無人店舗は道内初で、全国でも例は少ない。主に子ども服やベビー服を置き、ファミリー層や高齢層がターゲット。店員不要のメリットを生かして24時間年中無休で営業する。

「接客のストレスなく買い物してほしい」と話す竹田社長
1000―1500点の服を常時陳列する。子ども服を中心に同社のスポーツブランド「yuk」や母親世代向け、靴・雑貨も取り扱う。店舗(広さ100m²)は本社や倉庫の入る自社ビル1階にあるため補充の手間は小さい。卸業者のため、問屋価格で販売。顧客ニーズによっては食品などの取り扱いも検討する。
店舗利用には身分証を用いた会員登録が必要。スマートフォンの入退室管理アプリで入り口の鍵を開ける。セルフレジでの支払時は顧客が商品バーコードを読み取り、クレジットカードや交通系IC、QR決済などキャッシュレス全般を利用する。現金には対応しない。
AI搭載カメラの顔認証で顧客の性別や年代、入店時刻を記録する。セルフレジのカメラ映像と合わせてどんな人が何を買ったかを把握し、ニーズ分析や仕入れ効率化に生かす狙いだ。店内には複数台の防犯カメラも取り付け、事務所で常時見られるようにしてセキュリティー対策とする。
衣料品廃棄を減らす観点から古着を集めて格安で売るプロジェクトを実施するほか、顧客と共同の商品企画も構想。竹田尚弘社長は「人とのつながりのある無人店舗にしたい」と将来像を描く。
初年度の売り上げ目標は1500万円。1号店を軌道に乗せ、いずれは市内で数店舗の追加出店を目指す。郊外の幹線道路沿いや住宅街を視野に入れ、立地に応じて1号店と異なる品ぞろえを検討する。
将来的には無人店舗の運営業務をパッケージ化して道内外で展開する考えだ。場所と商品があれば運営できるビジネスモデルのため、量販店に押されている地方の個人店などでも店舗経営を続けられる。竹栄としては卸業の販売促進につながるメリットがある。
セルフレジ2台の設置だけでも数百万円の費用がかかり、内装工事や備品購入などを含めると多額の投資になったという。中小企業庁の事業再構築補助金を活用した。
所在地は札幌市中央区北3条西12丁目2の3。地下鉄東西線西11丁目駅が徒歩圏だ。
同社は1928年創業。15年前から楽天やAmazonでのネット販売を手掛けている。数年前に市内で写真館を開いたほか、昨年から食品ロスを減らす試みとしてフードシェアサービスを始めるなど多様な事業を展開。竹田社長は「新しい無人店舗を会社の発信基地にしたい」と意気込む。
(北海道建設新聞2021年10月28日付3面より)