テレワーク向け、庭などに設置
北の住まい設計社(本社・東川)が今秋売り出した小屋「Nest(ネスト)」に全国から関心が寄せられている。庭などの空きスペースに、テレワーク用途で設置することを想定。家具職人が施工し、机やベッドなど室内設備を造作とすることで細部にこだわった空間を実現した。まず道内での受注に向け、本社敷地内にこのほどモデルハウスを開設。販売拡大を目指す。
W造ツーバイフォー工法、平屋、延べ10・8m²の規模。仕事に集中できるように机と棚、ベッド、洗面台、トイレ、シャワールームのみを基本パターンとした。室内設備に住宅資材メーカーなどの既製品は使わず、同社の職人が作り込んだ設備・家具で統一する。
床材に道産ナラ、外壁材には道南スギを使う。壁は内外ダブル断熱、窓はトリプルサッシにして断熱性を保ち、冷暖房用のエアコン1台で通年利用できるようにした。
建物の施工は、同社グループの大工が監修する下で家具職人が担当。設計を担当した秦野誠治氏によると、家具職人が小屋を建てることで、一般的な建築では問題とされない0・1㍉単位のこだわりが仕上げに反映され、より洗練された部屋になるという。
価格は小屋本体のみで685万円(税抜き)とした。同社工場で組み立てた小屋をコンテナ方式で運搬し、基礎の上に設ける。
コロナ禍で在宅ワークが広がったことを背景に、仕事とプライベート空間との区別に悩む人を主要ターゲットとする。同社はグループ会社の「北の住まい建築研究社」で住宅建築を手掛けていて、施工先の顧客から「テレワーク体制だが勤務時間中でも自室を出ると日常に戻ってしまう」「リモート会議の音を家族に聞かせたくない」といった声を聞くようになったという。この解決策として、渡辺恭延社長が仕事向けの小屋を構想。2月ごろから設計を進め、8月半ばにモデル小屋を完成させた。
9月にホームページを開設して売り出したところ、複数のメディアに取り上げられ、道内外から問い合わせが相次いでいる。自宅敷地内に設置する以外にも、企業の作業ルーム用途や、移住促進を狙う自治体による滞在体験拠点向けとしても引きがあるという。
同社は、札幌にショールームとしてNestを開設することも検討中。東川から道内各地への運搬体制を確立し、販売を軌道に乗せた上で将来の全国展開を視野に入れている。
(北海道建設新聞2021年10月29日付3面より)