おとなの養生訓

おとなの養生訓 第218回「喫煙と歯周病」 禁煙で病気リスク低下

2021年11月01日 18時00分

 歯周病は、昔は歯槽膿漏(のうろう)といわれていた病気のことです。歯と歯茎の境目で細菌が増殖して炎症が起こり、歯茎が腫れたり、出血したりして、ひどくなると歯が浮いて痛みを感じ、ついには歯が抜けてしまいます。約400万人の患者がいるといわれ、国民的な生活習慣病の一つと考えられるようになりました。

 実は歯周病と診断されていなくても、かなりの人が大なり小なり歯周病を持っており、そのために、40歳代以降歯が抜けて入れ歯になる人が多くなります。丁寧な歯磨きや定期的歯科検診が必要とされるわけです。

 歯を失うだけでなく、慢性的に歯周病が続くと、全身に深刻な影響を与えます。最近の研究では、肺炎や動脈硬化の原因になると指摘されています。歯周病の原因である細菌が、肺に侵入して肺炎となります。

 一方、細菌が作り出した毒素が、血管に悪影響を与え、血管の内膜に慢性炎症を引き起こし動脈硬化となります。動脈硬化は血圧を上げ、心筋梗塞や脳梗塞などの死に至る病の原因となることは言うまでもありません。歯周病を甘く見ると、痛い目に遭うことになるのです。

 さまざまな研究により、喫煙習慣が歯周病を悪化させるということが分かりました。たばこの成分には有毒なものがたくさん含まれていますが、これらの成分が歯茎の粘膜を刺激し、炎症が起こりやすくなっています。

 そして、一番の成分であるニコチンは、粘膜の血管を収縮される作用があり、粘膜に必要な栄養や酸素が供給されにくくなります。そうすると、粘膜の抵抗力が失われ、細菌が増殖しやすくなります。さらに、血管が収縮しているので、歯周病の症状である出血が起こりにくく、歯茎の腫れもあまり起こりません。

 細菌の増殖が起こっているのに、症状が分かりにくいので、歯周病が進んでも、気が付きにくく、治療が行われないケースが多くなるというわけです。喫煙は循環系や呼吸器に直接悪影響があるのですが、歯周病を介して悪影響が倍加されるということになります。

 歯茎の調子がいまいちだったり、歯磨きですぐに出血してしまったりする喫煙者の皆さん、すぐにでも禁煙した方が得策です。禁煙すると動脈硬化による病気のリスクがぐんと下がることが証明済みです。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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