本間純子 いつもの暮らし便

 アリエルプラン・インテリア設計室の本間純子代表によるコラム。

 本間さんは札幌を拠点に活動するインテリアコーディネーターで、カラーユニバーサルデザインに造詣の深い人物。インテリアの域にとどまらず、建物の外装や街並みなど幅広く取り上げます。(北海道建設新聞本紙3面で、毎月第2木曜日に掲載しています)

本間純子 いつもの暮らし便(14)テレワークに向かない仕事

2021年11月12日 09時00分

 長く使っていたWi―Fiルーターが先日、再起不能となりました。今年に入ってから、度々不調を訴えていたので、交代の検討はしていたのですが、とうとうその日が来てしまいました。パソコンはこれまで通りメールもネット検索もできるので、基本的に不自由はないのですが、Wi―Fi接続のiPadが使えず不便です。重めの「Wi―Fi依存生活」になっていることを認識する事件でした。

 インテリアコーディネーターは、三角スケールと鉛筆とカッターがあれば、基本的に仕事は可能でしたが、今はiPadでカタログを開きながら、パソコンで提案資料を作成するのがデフォルトになりました。各メーカーの製品画像をダウンロードして資料に貼るので、カタログの写真を切り取ることがなくなり、カッターの出番は減少。インターネットによって、提案の準備は変化しています。

 デジタルカタログは、図面の細かなところを拡大できる利点もあって、出先での出番が増え、打ち合わせに持ち歩くカタログの数が少なくなりました。それでも、2種類の製品を比較したい時は紙のカタログの方が便利ですし、色彩や素材感は見本帳がなければ判断ができません。床・壁・天井の色が相互に影響し合う色かぶりや、光沢がある素材の写り込みなど、インテリアならではの要注意事項は、現物サンプルの確認が不可欠です。

 提案資料のほとんどをパソコンで作りますが、私の仕事はその中では完結しません。「提案資料を紙に印刷」「現物サンプルを見てインテリアの材料を決める」など、アナログな部分の方が多いのです。実際の建築現場では、多くの人の手によって家を作り上げますし、インテリアの家具やカーテンの工事は、現場の状況に合わせる対応が求められます。竣工までの時間も、インテリアコーディネーターの仕事です。

 緊急事態宣言下に「インターネットの会議システムを使って、カーテンの打ち合わせをしたが、うまくいかなかった」といった話を聞きました。居合わせた人は皆「そうだろうなぁ」と納得の表情。パソコンのモニターで見る色は実際の色と一致しませんし、手触りや重さは実感しにくいので、お客さまも判断しかねたのかもしれません。

 カーテンメーカーのウェブ新作発表会では、生地の素材感が分かるよう工夫して見せてくれましたが、ビニール手袋をしたまま生地に触れているような感覚で、もどかしさが先立ちます。メーカー側もインテリアコーディネーター側も、お互いに歯がゆい思いの発表会だったようです。「私の仕事はテレワークには向かないなぁ」と感じました。

 パソコンの性能が上がったほか、私の慣れもあって、提案書の作成は早くなりました。私のパースは手描き派ですが、写真のようなインテリアパースを作成したり、3D画像の室内を自由に歩いて見ることができるアプリケーションもあります。いずれ手触りや重さ、匂いや温度を感じながら、仮想空間でインテリアを検討するようになるのかもしれません。

 今はアナログな工程が多いインテリア業界。どこまでデジタルに置き換わるのか、気になるところです。

(北海道建設新聞2021年11月11日付3面より)


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