ヒトは一日に約1.5ℓのおしっこを出します。一升瓶が1.8ℓですから、結構な量を出すのかと、驚かれる方もおられるでしょう。でも、この量をいっぺんに出すわけではありません。では1回のおしっこの量はどのくらいかというと、実は人それぞれで、大きな違いがあります。少ない場合は0.2ℓ、多いと0.5ℓにもなります。この差は、おしっこをためている膀胱(ぼうこう)の神経の敏感さと関係があると考えられています。神経が敏感な人は、少しでもたまると、おしっこがしたくなる、すなわち尿意を感じます。逆に、尿意を感じにくく、いったんトイレに行くと、たくさんのおしっこを出す人もいるわけです。
実は、一日に出るおしっこの量は個人差があまりないと考えられています。だから、1回の量が少ない人は、一日のおしっこの回数が多くなり、1回の量が多い人は、一日の回数が少なくなります。1回のおしっこの量の平均は0.35ℓ、ビール缶1本分と考えられますので、平均的な回数は4回から5回となります。
おしっこの回数が極端に少ないときは、体の水分量が少なくなっている脱水状態になっている恐れがあります。とくに、熱中症になりかけているときには、おしっこの回数が減るので、トイレに行っていないと気が付いたら、すぐに給水をするべきです。一方、おしっこの回数が多いのは、水の飲み過ぎというのではなく、別な病気である危険性があります。それは腎臓病、膀胱炎、そして糖尿病です。
腎臓病は、初期に体の水分が保持する能力が低下して、一日のおしっこの量が増えることがあります。膀胱炎では、炎症のために神経が過敏状態になり、少量でもすぐに尿意を感じるようになり、少しずつ頻回にトイレに行くようになります。
糖尿病は血液に糖分がたまってしまう病気ですが、その糖分はおしっこに出てきます。それによって、糖分と一緒に水分もたくさんおしっこに出てくるので、一日のおしっこの量が増えます。
そこで、頻回にトイレに行きます。ひどいときは1、2時間ごとに通います。水分が大量に失われるので、いつものどが渇き、しきりと水を飲むようになります。肥満気味の人が、水やお茶のペットボトルを手放せず、頻回にトイレに通うのは、糖尿病の危険信号です。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)