大きな自然災害が起こったとき、トイレ対策は衣食住の確保と並んで喫緊の課題だ。断水で水洗トイレが使えなくなるほか、避難所などで仮設トイレが不足して衛生環境の悪化や健康被害につながる事態が起こりうる。関連各社はコンテナ型やトイレカー、土壌を使った汚水浄化システムといった多様な製品を扱い、万一に備えた事前の対応を促している。
ウォレットジャパン(本社・札幌)はコンテナ型仮設トイレ「ウォレットTC」を販売・レンタルし、公共施設やイベントなどで広く活用されている。内部に水洗トイレや手洗い場を置き、給水は貯水タンクを別途に設けるか上水道とつなげて確保する。汚水は内蔵タンクにためてくみ取るか、下水道に直結して排出。タンクにためる場合は約8000回使える。
2017年に販売を始め、18年9月の北海道胆振東部地震では札幌市や安平町、厚真町の避難所で使われた。翌年の台風19号発生時は宮城県丸森町の避難所で設置された実績を持つ。
荷台に載せてトラックで運べる。税込み価格は500万―700万円(税込み)ほどで、ベビーベッドや洗浄便座、寒冷地仕様などはオプション対応。小型化やコスト削減を図った建設現場用も扱っている。
可搬式消防ポンプなどを販売する北海道モリタ(本社・札幌)は移動式「トイレカー」を扱う。汚物をタンクにため、バキュームカーによる収集や汚水マンホールへの排出で処理する。汚物をためた状態でも運転できるため、災害時に自走して避難所を回るなどの使い方が想定できる。
3サイズあり使用回数は小型が約200回、大型が約700回。小型は普通自動車免許でも運転可能。大型では男女の仕切りを設けられる。価格は小型4WD仕様で700万円(税込み)。ベビーベッドなどのユニバーサル仕様や車椅子昇降機にもオプション対応する。
グリーンハート・インターナショナル(本社・大阪府吹田市)は汚水浄化装置を備えたトイレを製造している。装置内には好気性微生物の含まれる土壌が積層し、24時間かけて汚水を浄化。水は再び流水に使われるため給水は不要だ。上下水道が未整備の場所で使えて廃棄物も出ない。
自治体が主な顧客で、関西・関東を中心に全国70カ所以上の公園や屋外施設で導入した。25年使われ続けている製品もあるという。現行商品は2サイズあり、処理量2㌧のタイプは1日に420回使えて税込み価格は約1650万円。
開発中の「水土Mini」は現行品と異なり、施工不要で設置できる小型製品だ。販売時期や価格は未定だが、災害避難所での活用が期待できるという。
さまざまな企業が扱うトイレ製品は処理能力や構造、価格といった面で違いを見せる。自治体や企業が調達を検討する場合、人口や地形、水道整備状況など地域事情に応じた選択が重要となりそうだ。
(北海道建設新聞2021年11月10日付3面より)