価格上昇感強まり需給逼迫
建設資材価格の高騰に収束の気配が見えない。国土交通省がまとめている主要建設資材需給・価格動向調査の推移を見ると、緩やかに上がり続けてきたH形鋼や木材の価格動向は6月以降、上昇感が一層強まった。連動して需給動向の逼迫(ひっぱく)感も数値に表れている。実際に公営住宅など、市町村の公共建築工事に影響を及ぼした事例も見られ、2022年度予算案の編成時期を迎える中、今後の事業執行への影響も懸念される。(資材価格動向取材班)
国交省の需給・価格動向調査は、供給側である建設資材の生産者や商社、販売店など、需要側である建設業者と合わせて約2000社のモニターを選定して実施。現在の価格動向を「1(下落)」「2(やや下落)」「3(横ばい)」「4(やや上昇)」「5(上昇)」の5段階で回答を受け、その平均値で表している。
道内の直近1年間の価格動向を見ると、H形鋼は21年に入ってから、木材は春先から価格上昇が顕著になった。H形鋼は2月に「4.0」に達したが、その後も上昇は収まらず、7月には「4.5」になった。木材(製材、型枠用合板)はさらに上昇感が強く、6月は「4.0」、7月は「4.4」で、うち型枠用合板は8月に「4.5」を記録。木材の需給動向も6月以降、急に逼迫感が強まり、型枠用合板は在庫不足が続いている。
資材不足や価格高騰の影響は市町村の建築工事に影響を及ぼしている。上川町では公住望岳団地建て替えで、木材価格高騰の影響による入札不調が発生。輸入材だけでなく、代替の道産材の入手も困難になり計画がストップしている。
日高町の公住表町団地も、木材価格高騰や搬入遅れといった「ウッドショック」の影響で工期・業務期間延長を決め、10月下旬に議会承認を得た。契約額も増額を見込み、施工者と協議の上、12月議会に契約内容変更の議案を提出する予定だ。
公住都団地建て替えを進めている赤井川村は、17年度策定の公住長寿命化計画で1棟当たり1億1000万円の工事費を見積もったが、23年度着工予定の棟は1、2割上昇を見込んでいる。南幌町は22年度に施工予定の誘客交流拠点施設について、規模を縮小するという措置を取った。
札幌市都市局は21年度の学校改修工事などで、設計上の木材は納期に間に合わないことが判明し、同等または同等以上の木材に変更。今のところ全体工程や工事費に影響は出ていないものの、コンクリートやガラスなどの価格も上昇していることを背景に、同局の担当者は22年度発注分に「どのくらい影響があるか現段階では不透明だ」と話す。
民間工事では、JA北海道厚生連が計画する倶知安厚生病院建て替えで、新設棟の建築費が2割ほど増加する見込み。基本設計概算時の参考価格(18年時点)から21年春ごろまでに公立病院落札額が平均5.8%上昇したことや、23年夏の着工時期に鋼製建具、ガラス、造作家具などの見積価格の上昇を見越したことが理由だ。公共、民間双方からの引き合いで資材価格の上昇が加速する可能性もある。
帯広信用金庫の景気動向調査で、ある製材業者は「ウッドショックの影響で建設業の引き合いが多く、特需状態」というコメントを寄せた。その一方で、建築資材製造業者からは「価格転嫁ができず収益が悪化している」、鋼材卸業者は「高騰で建築の受注が低下気味」と厳しい現状を訴えた。
これまで資材高騰が設計変更や入札に影響を受けたことがないところもあり、市町村によって受け止めはさまざまだが、担当者からは「価格高騰を見越した予算対応」や、価格動向を見ながら「状況に応じて対応」という声も聞かれる。22年度予算への影響と、インフレスライドなど発注済み工事への適切な対応を注視する必要がある。
(北海道建設新聞2021年11月13日付1面より)