北8西1地区再開発で新工法を初採用 大成建設

2021年11月19日 09時00分

タワークレーン一体型クライミングシステム「テコアップシステム」

 大成建設は、札幌駅北口の北8西1地区再開発で、タワークレーン一体型クライミングシステム「テコアップシステム」を初採用している。RCや鉄骨の既設柱を使い、タワークレーン(TC)搭載の鉄骨フレームを上階へ移動させる工法。開発機械化推進室の市原英樹室長は「テコアップを基軸に、将来的には閉鎖環境内での施工や機械化・ロボットの遠隔施工を実現したい」と意欲を示す。

ビル構造外に1台、屋上にもう1台のタワークレーンが見える

 分譲マンションやオフィスなどが入る48階建て複合ビルA棟や、ホテル・店舗の入る地上14階建て複合ビルB棟を建設中だ。A、B棟合わせて延べ11万2805m²の規模。昨年7月に着工し、23年12月の完成を予定する。最高地上高は175mで完成時は道内最高層となる。地下鉄東豊線さっぽろ駅と新ビルは地下通路でつなげる。

 施工は大成建設・伊藤組土建・スターツCAM共同体が担当。基本設計は日本設計とドーコン、実施設計は大成建設が担当した。

 新工法では、専用鉄骨フレームや油圧ジャッキなどから成るテコアップシステムを屋上に設置。既設柱に取り付けた支持具でフレームを支え、その上にTCを載せる。ジャッキアップによりフレームとTCを一体で昇降させる仕組みだ。既設柱でTCを上げるシステムはほとんど例がなく、ジャッキシステムは既設柱の品質や安全性に影響しないという。

 フレーム下面にはX軸とY軸の2方向に移動できる天井クレーンが取り付けられ、屋上部での部材設置に活用できる。

 従来のフロアクライミング工法と違って建築物に開口部を確保してクレーン用マスト(柱)を置く必要がない。このため、雨水養生や止水処理が不要、コンクリートを後から流し込む必要がなくマストクライミングが不要といったメリットがあり、品質・工期・コストの面で優位性を持つ。

既設柱6本で鉄骨フレームを支え、タワークレーンを設置している

 また、フレーム上のどこでもTCを搭載できるため、クレーンを小型化できる。工期短縮に伴いCO排出量も減らせる。

 11年に初導入した超高層ビル解体技術「テコレップ」の仮設架構昇降技術を応用した。

 北8西1の再開発地区ではA棟東側の建物外にTC1台を置き、屋上の反対側にテコアップシステムとTCを設置。6本の既設柱で支える。

 16日に工法を公開し、地上約50mの16階から1フロア分3.3m、フレームとTCを1時間でジャッキアップ。事務所のモニターでは各柱での昇降量や荷重、水平度などを確認できる。

 今回のテコアップシステム採用はTC1台だけだが、4―5年後をめどに同一現場内2台での導入を実現したい考えだ。150―200m規模のビルで1億円程度のコスト削減効果を見込む。

 将来的には床全体にフレームを広げたい考え。テコアップ導入による閉鎖環境での現場施工が実現すれば、本道のような積雪寒冷地でも冬季の安定施工が可能になる。機械化やロボット施工など他の要素技術とも統合してパッケージ化し、新たな施工方法の開発を目指す。

(北海道建設新聞2021年11月18日付3面より)

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