市が視察補助など誘致推進
旭川市内でサテライトオフィス誘致が進んでいる。2020年度末時点でIT企業を中心に10社が事業所を開設。市は視察や滞在費を補助し、十数社に新規のオフィスやワーケーションの誘致を試みているほか、2カ所で拠点開設が可能な大型レンタルオフィスの整備を支援する。空港に近く首都圏との往来も容易なメリットを生かし、地域での雇用促進や移住・定住につなげる構えだ。
総務省がまとめた地方公共団体が誘致したサテライトオフィスの開設状況によると、20年度末で道内は86件。うち10件が旭川市で、10人以下の小規模なIT系事業所の開設が相次いでいる。
20年度はITベンチャーのビックボイス(本社・東京)が緑が丘の旭川リサーチセンター内に事務所を設置。19年度にも同センターにPC製造・販売を手掛けるクエストコンピュータ(同)が入居したほか、3社が市内に拠点を置くなど近年は増加傾向だ。
コロナ禍でテレワークが一般化したことを踏まえ、市は拠点開設やワーケーション実施のための企業視察の旅費や滞在費を補助する制度を創設。20年度予算の繰り越し分と21年度当初合わせて13件を採択し、事務所の開設が可能な物件の紹介なども進めている。
市内には旭川リサーチセンターをはじめ、サテライトオフィスが開設できるレンタル施設が5カ所ある一方、共有のコワーキングスペースが中心となっているものが多い。市は21年度、テレワーク施設の整備補助を新設し、セキュリティーの高い個室や高速のWi―Fi環境が整った拠点2件の開設を補助することを決めた。
野村設計(本社・旭川)とSanagy(同)は宮下通19丁目右4にあるRC造、4階建ての居住用ビルをサテライトオフィスや、地域の学生や住民との交流スペースにリノベーション。ITセキュリティー企業のラック(本社・東京)はICTパークが入居する神田館の1階空きテナントを、個室や会議室を備えたテレワーク施設に改修する。
市の担当者は、市街地に近く冬季でも就航率が高い旭川空港が首都圏との往来に優位と分析。Uターン需要も視野に入れ、都市部で拠点開設のPR活動を展開する方針だ。
(北海道建設新聞2021年11月18日付8面より)