道内中古マンション高騰 背景に生活の変化

2021年11月25日 15時00分

高齢化社会進行、新築よりも手頃

 道内の中古マンション価格が上がっている。東京カンテイによる直近の調査結果を5年前と比較すると、人口増加が続く札幌市内だけでなく近郊の市、また函館、小樽といった人口減少市でも大幅な上昇を見せる。中古物件が注目される背景には、高騰する新築よりも価格が手頃なことや、高齢化社会の進行に伴うライフスタイルの変化がありそうだ。

 2021年9月の中古マンション平均価格(70m²換算)は札幌市内で2012万円となり、16年9月以降の5年間で37%の上昇を見せた。特に人気の中央区内は2460万円(39.4%増)で道内最高値。北区が2148万円(50.8%増)、東区が2279万円(57.3%増)でともに2000万円を超え、旺盛な中古住宅ニーズを示している。

 不動産業者に業務営業支援などをするセンチュリー21ジャパン北海道支店の担当者は「再開発が進む地区での需要が高いと加盟店から聞く。買いたい人は多いが、売り物件の情報がなかなか出てこない」と指摘。供給が少ないため高値で取引している傾向にある。

 人口増も背景にある。札幌市は中央区を筆頭に転入者数が転出者数を上回る「社会増」の状態にある。高齢化の進行に伴い死亡数が出生数より多い「自然減」も続いているが、社会増の勢いの方が強いため、人口が増え、マンションが不足気味となる。新築には実需だけでなく投資目的のマネーも入り込み、現実の住み手への供給ペースが追い付かない。こうして中古物件が値上がりするという構図だ。

人口減少市でも大幅上昇

 人口減少地域でも大幅な価格上昇が見られる。5年間で1万7000人以上減った函館市の同期間の中古マンション平均価格は34.6%増の1451万円。同様に1万人超減った小樽市は82.2%増の1608万円と2倍近い。

 函館と小樽は年配者による住み替えや、別荘としての需要が色濃く出ている。土屋ホーム不動産函館支店の担当者は「年配者が居住のために買う例は多い。戸建てからマンションに住み替える客を何度か担当した」と説明。イエステーション小樽店を運営する北章宅建の担当者は「別荘としての購入は少なからずある。海沿いのマンションは4000万円近い価格設定となっている」と話す。

 16年と21年の9月に5件以上の売買事例があった20の市区のうち、価格が下がっていたのは旭川、帯広、岩見沢の3市のみ。それ以外は低くても20%超の伸びを見せる。単なる札幌一極集中や投資マネーの流入だけでは説明しにくい現象だ。

 東京カンテイ市場調査部の井出武上席主任研究員は、中古マンション値上がりの一因を高齢者による住み替えニーズと見る。「建てた家への永住にこだわらない人が増え、資産を持つシニアを中心に戸建てからマンションへの住み替えが起こっている」と分析。かつて「集合住宅から戸建てへ」だった感覚は「戸建てから駅近のマンションへ」と変わりつつある。

(北海道建設新聞2021年11月24日付2面より)

 北海道建設新聞2021年11月24日付2面に16年・11年9月に5件以上売買があった20市区の価格変化をまとめた表を掲載しています。閲覧は新聞本紙をご覧ください。


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