「コスト上昇」と「需要低迷」の二重苦
生コンの値上げが道内で広がっている。最大市場を抱える札幌生コンクリート協同組合が4月から1m³当たり2200円の値上げを打ち出し、全道市況の底上げを図ったほか、輸送費や原材料費などの上昇で各工場が自助努力を超えるコスト高に置かれているため。世界的な経済環境の変化などからセメント各社も2022年1月以降の値上げを発表していて、生コン価格の上昇は新年度に入っても続く気配。鉄筋や型枠用合板も値上がりしていて、RC造の物件にとっては立ち回りの難しい局面になっている。
各地の生コンクリート協同組合が相次ぎ値上げを決めている。札幌は4月から2200円値上げし、普通コンクリートの建築標準物(呼び強度21、スランプ18cm、粗骨材20mm)で1万5500円に改定した。現場への荷動きが6月末までなければ新価格を用いる、いわゆる〝90日条項〟を設けたため、実際に市況へ反映されたのは9月ごろ。しかし全道一の低市況にあったため、市場へのインパクトは大きかった。
原料の骨材や燃料、輸送コストの上昇などを理由に、春から秋にかけて値上げが波及した。釧路は6月出荷分から1600円値上げし、釧路地区の建築標準物でおおむね2万1000円となった。苫小牧は9月の新規受注分から、苫小牧地区で1万9000円、白老地区は2万円に改定した。西胆振は11月の新規受注分から1000円値上げし、標準物で2万700円に引き上げた。
紋別は12月1日受注分から販売価格を1000円値上げする。紋別と湧別・遠軽、興部・雄武地区の標準物は2万1450円、白滝と滝上地区は2万1950円となる。
原料のセメントも先々の値上げが予定されている。太平洋セメントは22年1月出荷分から1t当たり2000円、宇部三菱セメントは2200円値上げする方針。住友大阪セメントは2月出荷分から2400円、日鉄セメントは3月出荷分から2200円それぞれ引き上げる。
輸送や原材料などのコスト上昇に加え、需要低迷の二重苦で生コンの値上がりは年明け以降も続く。富良野は22年4月契約分から2000円引き上げ、建築標準物で1万9800円とする。値上げは3年ぶり。
旭川は4月から標準物で1万9500円に改定予定。留萌と宗谷も4月1日受注分から一律1500円引き上げる。空知は2000円引き上げ標準物で2万円とし、千歳は標準物で1万7500円に改定する。
同じRC造の材料に目を向ければ、世界的な鉄スクラップの高騰から鉄筋も続伸している。経済調査会の積算資料によると、札幌地域の異形棒鋼(SD295A D16)は足元で1t当たり9万6000円と、春先に比べて1万4000円ほど上昇した。型枠用合板も品不足から値上がりが収まらない。計画物件に対する設計変更などの影響が懸念される。
(北海道建設新聞2021年11月30日付3面より)