人材難、業界一丸でPR
創業62年を迎えた北電力設備工事(本社・札幌)は、電気工事の道内有力企業の一つ。公共工事のほかマンションや商業施設など民間工事を幅広く手掛け、携帯電話設備など通信工事も拡大してきた。電気工事業界では今どんな変化が起きているのか。北海道電業協会のほか複数の関係団体で理事を務める伏木淳社長(57)に尋ねた。
-長引くコロナ禍は電気工事業界にどう影響しているか。
現状では、工事の中断や発注の遅延・中止などの影響は大きくない。だがここに来て、海外サプライチェーンの停滞から、電設資材や機器などの調達遅れ、価格高騰の懸念が出てきた。メーカーや資材商社からその旨の連絡が届くようになった。
-コロナ以前を含め、近年の電気工事の市況はどうか。
平成20年台前半は公共工事が最も減った時期で、リーマンショックで民間工事も激減し、当社も2年続けて赤字を強いられた。その後はアベノミクスで公共工事が回復し、震災や豪雨が起きたことで災害対策の設備投資も増えた。民間では札幌のマンションやホテル建設が堅調だ。大型施設の建て替えなどもあり、ここ数年の工事量は横ばいで推移していると思う。コロナ後は、インバウンド回復などを通じて道内経済が平常に戻り、計画されている施設建設が着実に実施されるよう望みたい。
-仕事の多い近年、自社の課題はどんな点か。
やはり長時間労働が大きな課題になる。官庁工事では週休2日制が導入されつつあり、建設業界でも土曜閉所運動が徐々に実施されるようになるなど、一部には状況改善の兆しもある。このほか業務効率化に結び付くICTの推進も急務だ。当社も現場代人は皆タブレット端末で管理し、書類の電子化やクラウド管理などを進めている。だがまだまだ道半ばで、会社全体としてのICT化を急がなければならない。
-業界の課題は何か。
建設業全般に言えることで、人材の確保・育成が最大の課題だ。数年前に団塊の世代の退職が進んだ半面、少子化の影響や3Kイメージから若者の入職は増えず、人材不足が一気に進んだ。
電気工事業界は工業高校電気科の卒業生を多く受け入れて来たが、近年は工高への進学者が減り、定員削減や学科・学校の統廃合も進みつつあるようだ。道内では特に地方都市が深刻で、このままでは地方に電気技術者がいなくなってしまう。他業種からの入職は、電気工事士の資格取得が難しいイメージがあるのかなかなか目を向けてもらえない。女性や外国人の活用もあまり進んでいない。
-人材難に業界はどう取り組む。
業界団体では、資格取得や基礎的技術を身に付けるための研修事業に力を入れてきた。今は会員企業のニーズを聞き、さらに必要な研修について検討している。また札幌電気工事業協同組合の青年部は、若年層へのPRのため工高に出向いて、生徒や先生はもちろん保護者に対しても説明会を開いている。その効果もあって、地元の電気工事業者に就職する生徒が少しずつ増えてきた。
-今後の展望は。
建設業の「新3K」は「給与」「休暇」「希望」だと聞いた。希望の意味では、電気技術者が、人々の安全・快適な暮らしを担う電気を提供、維持する重要な使命を持つ職業だともっと若者に伝えたい。また、気候変動対策での新エネ、省エネ設備の導入、高度情報化の進展など、電気工事業界に向けられる期待はますます高まると確信している。技術の仕事を目指す若者にどんどん入職して活躍してもらいたい。
(聞き手・吉村 慎司)
(北海道建設新聞2021年11月18日付2面より)