地域資源を域内循環/サツドラなど社団法人が仕組みづくり

2021年12月08日 09時00分

 課題先進地域といわれる北海道で、「デジタル地域通貨」の普及を核に社会課題の解決や域内経済活性化を目指す枠組みが始まっている。サツドラホールディングスの富山浩樹社長が代表理事を務めるQUALITY HOKKAIDO一般社団法人(本部・札幌)だ。道内人口520万人に対して「決済」を接点に、お金やデータなどの地域資源が流出せずに域内循環する仕組みを中長期でつくる。

 人口減少と少子高齢化などの社会課題が他地域より先駆けて進む道内。11月に発表された2020年国勢調査(確定値)によると、道内の生産年齢人口(15―64歳)は15年比で20万2000人減の299万人と、65年ぶりに300万人を下回った。減少率は6.3%で全国(1.6%)と比べてかなり高い。

 QUALITY HOKKAIDOは7月、先端技術の社会実装やオープンイノベーションを通じ、北海道の価値向上や経済活性化を図る目的で設立。サツドラの他に石屋製菓、北海道銀行、畜産業向けクラウドのファームノート(本社・帯広)、データ分析管理のデータゲートウェイ(同・東京)など道内外の11団体が加盟する。

 同法人が目指すのはデジタル地域通貨の道内普及だ。決済という日常的な行動を通じて道内で生み出されたお金やデータ、モノが道内で循環する仕組みを構想。商品やサービスの購入だけでなく企業間取引、給与支払いでの活用も視野に入れ、2年後をめどにサービス開始を目指す。アプリでのQR決済を想定する。

 サツドラ子会社のリージョナルマーケティング(本社・札幌)が運営するポイントカード、EZOCA(エゾカ)で得たノウハウも活用する。EZOCAはサツドラ店舗や提携店など道内の約600店舗で使え、会員数は直近で200万人を超えた。

 ブロックチェーン活用も検討する。サツドラとデータゲートウェイは昨年、ブロックチェーン活用の決済システムをサツドラ店舗で実証実験し、決済速度などの面で実現性を確かめている。

 決済サービスの長期運営には一定規模の利用者を確保し、収益基盤を担保する必要がある。PayPayなど大手キャッシュレス決済の囲い込み競争で見る光景だ。

 その点、北海道は「規模の経済が働く」(リージョナルマーケティング渡部真也社長)。北海道では小売りや飲食、企業間取引などの領域で道内企業が主体となるケースが多く、地域通貨の流通ポテンシャルは高いとみる。同規模の地域通貨は国内で例がない。

 企業間データ共有

 地域通貨を使う人の共通IDに基づく企業間データ共有も志向する。BtoC企業はおのおのが消費者データを収集するが、単独での利活用には限界がある。IDの付与されたデジタル地域通貨が使われれば、消費者がどんな飲食店を訪れた後に何の買い物をするのかといったデータを企業間で共有し、サービス向上や新事業につなげられると期待する。

 マイナンバーと連携させて自治体サービスを受ける手段にするなど、自治体や官公庁との連携も構想。政府がマイナンバーカード発行者に対して民間決済サービスからマイナポイントを付与したのと、同様のイメージだ。

 リージョナルマーケティングの渡部社長は「キャッシュレス決済は過疎地にこそ必要だ」と強調し、地域密着企業として幅広い年齢層に必要性を訴求する考えを示す。まずはビジョンに賛同する仲間を募りつつ地域課題について議論を深める。


 地域通貨って…なに?

 特定の地域やコミュニティーの中だけで使える疑似的な通貨。自治体や民間企業などが発行する。地域経済の活性化が主な目的。形態は紙や電子決済がある。購入に対して一定のポイントが付与される場合もある。道内では美瑛町がことし4月に始めたBeコイン、eumo(本社・東京)がニセコで運用するNISEKO eumoなどがある。全国では飛騨信用組合(岐阜県高山市)のさるぼぼコインなどが有名。

(北海道建設新聞2021年12月7日付3面より)


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