山側トンネル案が最有力 229号乙部町館浦地区斜面

2021年12月15日 09時00分

岩盤崩壊への恒久対策

 北海道開発局は、13日に開いた国道229号乙部町館浦地区斜面対策技術検討会(座長・蟹江俊仁北大大学院工学研究院教授)で、恒久対策5案を提示した。現道を活用する切り土案、ロックシェッド案と、別線ルートとなる山側トンネル案、山側土工案、海側案の各案。検討会では事業期間、事業費、地域景観などの点から、別線ルートの山側トンネル案が有力との意見で一致した。同案の事業期間は約7―10年、事業費は約140億―190億円を試算している。

 同技術検討会は、6月6日に発生した乙部町館浦地区の岩盤崩壊災害に伴い発足。当該地区の斜面評価、環境、安全性、維持管理性を総合的に勘案し、最適な対策工法などを技術的に検討する。今回の会合で3回目となる。

 この日に示された応急対策案を見ると、事業期間は約9―16年、事業費は約110億―290億円を試算。一定の安全性を確保するためには短期間施工は困難としている。このため各委員は、応急対策を経ずに恒久対策に着手すべきとの見解を示した。

 恒久対策案は、現道ルートが切り土案、ロックシェッド案の2案。事業期間は約10―26年、事業費は約270億―660億円としている。

 別線ルートは山側トンネル案(事業期間約7―10年、約140億―190億円)、山側土工案(約13―16年、約290億―360億円)、海側案(約15―18年、約790億―980億円)の3案となっている。

 現道の切り土案は、対象斜面を標準切り土勾配で切り土し、斜面の安定を図る案。ロックシェッド案では、不安定部の岩盤を最小限の切り土で除去し、短期的に岩盤崩壊を防止してロックシェッドを施工する。

 別線の山側トンネル案は、車道6・5m、路肩両側0・75m、歩道片側2mの全幅10mを想定。事業期間と事業費は両側掘削による試算。懸念事項として、土石流危険渓流を縦断占用する場合には、砂防ダムが必要となる可能性がある。また、既存治山ダムの撤去、落差工新設、水路切り替えが生じる場合がある。

 山側土工案は、被災箇所を山側土工で回避する案。災害要因を回避した箇所での施工なので、工事の安全性は確保される。半面、大量の残土が発生するため土捨て場の問題や、砂防ダムの必要性、新たな長大斜面の造成に伴う長期的な劣化・不安定化への懸念―などのデメリットがある。

 海側案は、12径間連続PC箱桁橋(全幅11m)の橋梁を構築するもの。海上を橋梁で通過するので、共同漁業権、定置漁業権が設定されている範囲が支障となる。

 今後の調査検討では、ルート案の絞り込みに向けた地形・地質特性の把握を進める。各調査の結果、写真などを用いた地形判読、地滑り地形の有無確認、沢部土石流に関する調査検討などを実施する。

(北海道建設新聞2021年12月14日付1面より)

 北海道建設新聞2021年12月14日付1面には、応急・恒久対策各案の事業期間、事業費、懸案事項などをまとめた一覧表を掲載しています。閲覧は新聞本紙をご覧ください。


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