吹き付けウレタン断熱工事で原液不足 綱渡りの状況続く

2021年12月15日 15時00分

原料のイソシアネートが世界的に品薄だ

 建物の吹き付けウレタン断熱工事で使う原液が全国で不足する。原料のイソシアネートが世界的に品薄なほか、発泡剤の製造元の米国企業が2度のハリケーン被害を受け、生産を停止しているため。材料メーカーや地域によって需給状況に差はあるようだが、北海道を含め綱渡りの状況は来春まで続きそうだ。11月から来年1月までは繁忙期に当たり、日本ウレタン断熱協会は工事の遅延や工期への影響に警鐘を鳴らしている。

 吹き付けウレタン断熱工事用の原液は、ポリイソシアネートとポリオールの2成分からなり、混ぜることでポリウレタンの成形反応と泡化が進み、硬質ウレタンフォームを成形する。うちポリオール成分には、成形に必要な発泡剤や整泡剤、難燃剤などが含まれる。

 日本ウレタン断熱協会によると、混乱原因の一つが米国ハネウェル社によるHFO系発泡剤の供給不足だという。8月と9月にハリケーン被害を受けて生産設備を停止し、現状は通常の40―50%程度の供給力にとどまっている。

 主原料のイソシアネート(MDI)も世界的な資材不足から品薄で、電力不足から中国では難燃剤や整泡剤の生産が止まっている。関係者によると、アキレスや積水ソフランウイズ、旭有機材、BASF INOACポリウレタン、クラボウなど主要メーカーのほとんどが同じ状況にあるという。

 石狩管内の断熱工事会社は11月、仕入れ先の材料メーカーから供給不安の連絡を受けた。現場への影響を避けるため自社で案内文や資料を用意し、受注先のゼネコンに実情を伝えて回った。「今は通常通りの供給を受けられているが、先は見通せないと聞いている。原液は季節に合わせ春秋と冬などで品質を変えるほか、消費期限が3カ月と短いため在庫できない。業界で40年ぐらい働くが、メーカーから供給不安の兆しが伝えられたのは初めてだ」と打ち明ける。

 十勝管内の断熱材施工会社は10月下旬、材料メーカーから供給不安の第一報を受けた。現状で工事ができないなどの事態には陥っていないが、先々は物件によって受注制限の可能性も出てくるとみる。「幸か不幸か、今冬の北海道は仕事が薄いため救われていて、来年5月ぐらいには状況が改善されると思っている。われわれは仕上げ工事の先頭のため、ボード内装や水回りなど後工程に支障を来さないよう、しっかり仕事したい」と話す。

 メーカー系列によって現状の危機感に温度差はあるもようだが、おおむね道内の断熱工事会社は先々の材料不足に警戒感を示している。繁忙期の2月までは元請けと専門工事会社の間で綿密な情報共有が一層求められそうだ。

(北海道建設新聞2021年12月14日付3面より)


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