深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 常口アトム 清河智英社長

2021年12月28日 12時00分

清河智英社長

自社で「リフォーム再販」

 17日の取締役会で常口アトム(本社・札幌)代表取締役社長に就任した清河智英氏(61)。総合不動産業として道内最多の賃貸住宅を管理する傍ら、物件売買の強化に乗り出す。将来的にマンションや戸建てを中心にリフォームを施して再販するとともに、工事部門にM&Aで建設関連企業を迎えるなど、事業の内製化を図る考えだ。清河社長に今後の事業展開を聞いた。

 -来年は2020-22年中期経営計画の最終年となる。新社長として振り返りと取り組むべき課題は。

 コロナ禍で法人系による移動抑制が業績に影響したため、売り上げ目標は見直す必要がある。それでも少しずつ上向いてきていて、30期決算(21年9月30日)の純利益、経常利益ともにここ5、6年で見ると最も良かった。寒波による水道管の破裂が頻繁にあったことで、工事部門が大きく伸びた。ソリューション部門も物件売買で売り上げに貢献している。

 事業の柱となる賃貸仲介は例年並みだが、コロナ禍により集客ルートが大きく変化していることがうかがえた。来店比率が減少する一方で、電子メールでのアクセスが極端に増えていて、集客全体の7割を占める。だが、成約にうまくつながっていない面があり、他社と比べてシェアを落としている。デジタル対応を強化するなど攻め方を変える必要がある。

 -20年に新設したソリューション営業部の状況は。

 4つの金融機関とのアライアンスを組んでいてソリューション営業部が窓口となってやっている。不動産に関する情報提供などをして成約につながれば報酬をもらう仕組みを取っている。ことしは前年比5倍に案件が増えていて、大型成約につながったものもある。中には金融機関から開発案件の提案要望があり、実現する例も出た。発展途上だが、顧客とのアプローチの仕方や人脈が広まっていると感じている。

 創業当時は物件買い取りや開発、戸建て販売などに力を入れていたが、今は賃貸仲介事業が柱で自ら不動産を持つことはまれだ。しかし、最近は仲介だけの業者と見られると良い物件情報が入ってこない。今後の住宅関係の市況から見れば、再販前提の買い取りは必要だろう。来年からリスクを考えながら進めたい。

 -物件の再販事業はどう展開するのか。

 マンションや戸建てを中心にリフォームを施して再販する。自社が売却した物件を他社がリノベーション後に販売したものもあり、ビジネスチャンスを逃していた。工事を引き受けることで、新たな仕事へ広める。

 -本格的な工事部門が必要になるのでは。

 それは考えている。例年工事の発注件数は2万数千件で、修繕などの営繕工事がほとんどを占め、リフォーム案件が多少ある。ただ、工事は100%外部に委託している状況だ。これを内製化したいと思っている。

 営繕工事は多少の業務スキルが必要で、顧客から要請があればすぐ駆け付けなければいけない。1次対応という意味でも本格的な工事部門は持つべきで、専門業者を呼ぶ必要のある案件に限っては2次委託していければ良い。縁があればM&Aを含めて組織づくりを進める。買い取り再販するのであれば工事をひも付けし、内製化により利益確保につなげたい。

(聞き手・武山 勝宣)

 清河智英(きよかわ・ともひで)1960年9月18日、旭川市生まれ。83年中央大卒。北海道銀行専務執行役員本店営業部本店長を経て、2021年6月に常口アトム副社長執行役員に就任し、現職。

(北海道建設新聞2021年12月20日付2面より)


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