国際リゾート地ニセコの取材担当となり2年目。コロナ禍で客足が遠のく状況が続く中、先を見据えた開発投資を目の当たりにした1年だった。外資がけん引する開発にはリスクもつきまとうが、さまざまなハードルを乗り越えた先の発展に期待が掛かる。
11月30日、倶知安町内のニセコHANAZONOリゾートは熱気に包まれていた。新たなリフト・ゴンドラの完成披露会に、観光業者や報道関係者ら140人が集結。華やかなテープカットの後、参加者は本革シートをしつらえたゴンドラを試乗し、「快適な旅」に興じた。
主要客のインバウンドが見込めない中で進めた建設。同リゾートを運営する日本ハーモニーリゾートのコリン・ハクウォース社長は設備の高性能ぶりを熱弁し、「ワイスエリアにつながるリフト整備の序章だ」と事業拡大の可能性も示唆した。
「コロナ後を見据えて」を合言葉にするかのように、数年後の開業に向けた構想が相次いで明らかになった。着工した案件も少なくない。先行投資は災厄の中で停滞することなく、一層加熱している印象さえ受ける。
主な原動力は中国系資本だ。香港や本土に拠点を置く事業者のプロジェクトが目立つが、危うさが垣間見える出来事も起きている。
6月に大規模宿泊施設の開発構想が浮上したサンシティグループ。マカオのカジノ大手だが先月末、幹部ら11人が現地当局に逮捕された。賭博への規制強化を図る中国政府の意向とみられ、債務不履行の可能性もあるという。事件後、プロジェクト担当者6人に電子メールで問い合わせると、全て「エラー」と返ってきた。計画が暗礁に乗り上げた可能性は極めて高い。
同様の政治的リスクがもたらす影響に一抹の不安が残る。ただ、投資熱全体の急速な冷え込みにつながるとは考えにくい。グローバルな資本が流入する地域ならではの課題を抱えつつも、北海道新幹線や高規格道路の整備をてこに力強く突き進む。来年もそうしたニセコの姿が見られることを担当記者として願っている。(小樽支社・塚本 遼平記者)
(北海道建設新聞2021年12月23日付9面、連載『この一年(3)小樽』より)