工事規模縮小や工事延期も
高騰する資材価格が、建設業界だけでなく社会全体を揺らしている。新型コロナウイルスが世界的に広がったことで、これまで保たれていた貿易商品の国際需給バランスが崩壊。木材や鉄製品など工事に必要な輸入物が、今までの価格、納期では調達できなくなった。本道でも設計変更や工事延期が相次ぎ、住宅価格が上がるなど影響が広がっている。
6月上旬。学校法人琴似キリスト教学園(本部・札幌)が札幌市西区で計画したS造、3階、延べ1320m²の認定こども園新築の一般競争入札が、鉄骨や壁紙、床材といった資材高騰の影響を受けて不調となった。
開園は2022年4月と決まっていて、着工が遅れれば施設完成が間に合わなくなる。急きょ設計者と協議し、会議室や集会室など計40m²分を縮小することで3日後に再公告。同月下旬の入札を経て施工業者を決め、今は春の完成を目指して工事が進行中だ。
相場はその後も上がり続けている。経済調査会の積算資料によれば11月のH型鋼価格は11万4000円。1年前は9万円だったが春までに5000円値上がりし、さらに半年で1万9000円上がった。RCに使う鉄筋(異形棒鋼SD295A D16mm)は1年前の7万5000円が、5月には8万2000円となり、11月は9万6000円と10万円に迫る。
木材は「ウッドショック」として春先からマスコミで繰り返し報じられた。ハウスメーカーの住計画FURUTA(本社・帯広)は5月、月内着工予定だったW造社屋新築を資材高から延期。現在、22年4月以降の着工を検討している。札幌の三五工務店は9月、公式サイトで建築価格引き上げを周知した。公共工事でも、上川町が公住望丘団地の建て替えを9月に指名競争で入札したが、応札者が辞退。官民問わず、混乱の例は数え切れない。
輸入木材の値動きは、日銀の輸入物価指数の「木材・木製品・林産物」に現れる。2015年の年間平均を100としてその後の上がり下がりを表す指数で、コロナ禍が発生した20年は100を下回っていた。だが、ことし1月に上昇が始まり、3月に15年水準を超えると4月には107、5月は113と急激に上向きのカーブを描くようになる。11月の速報値は163だ。
日本は多くの資材や原料を輸入に頼るため、世界的なコンテナ不足からも大きな影響を受ける。日本海事センターが公表する輸送運賃動向によると、米国西海岸から横浜までの40フィートコンテナ輸送費は昨年10月に960㌦だったところ、ことし10月は1850㌦と2倍近くに上昇している。世界の主要航路の中には5、6倍になっているケースもある。
国際情勢も絡み、資材を巡る状況は刻一刻と変化する。予断を許さない。
(北海道建設新聞2021年12月11日付1面より)