事業始まり68年、今も続く
緑化の第一段階では、荒廃した土地を草で覆うための草本緑化を進めた。寒さに強いイネ科の種をまくも、強風の前に土ごと飛ばされた。木の枝の束やよしずをかぶせて保護を試みるが、コストや手間から十分な成果は出なかった。
その中で飯田英雄さんの父、常雄さんが雑海藻を発酵させた「ゴタ」をかぶせる保護手法を考案。コストが安く、効果も十分見られたことから、えりも式緑化工法として確立した。
そして、事業開始から17年が過ぎた1970年、ついにえりも岬沿岸192㏊に草地が復活。第1段階が完了した。
続いて、樹木を育てる木本緑化に移った。道内には自生しないクロマツが適しているとして植栽。風や塩害と戦い、水はけの悪い低地では排水路を掘削するなど工夫を重ね、木を植え続けた。
事業開始から68年がたった今も続く。2020年度末時点で197㏊の木本緑化が完了。現在は道道襟裳公園線沿いの両脇にクロマツ林が広がっている。これに伴い、魚介類などの漁獲高は65年度の227tから20年度には1367tまで回復した。
日高南部森林管理署えりも治山事業所の島下靖博治山技術官は「セミや鳥の声が聞こえるようになり、生態系が復活した」と語る。
ただ、現在のクロマツ一種林では虫・病害が広がりやすい。加えて1㏊当たりの植栽密度も通常の5倍ほど(1万-1万5000本)あるため、シラカバやミズナラへの植え替えと間伐を進める。
飯田さんと島下技術官は活動を途切れさせないよう、中高生に植林、枝打ちを通じて森の重要性を伝えている。
飯田さんは「緑化は折り返し地点。取り戻すには100年かかる。昔のようにしないため、環境に対応しなければ」と活動の持続を誓う。
映画「仮称・北の流氷」は23年の公開を目指している。浦河、様似、えりも、広尾の各町がふるさと納税などを使い資金を集めている。
(北海道建設新聞2021年10月29日付9面より)