道立の林業大学校「北の森づくり専門学院(略称・北森カレッジ)」が旭川市内に開学してから、もうすぐ2年になる。成長した1期生は卒業を控え、着々と内定を受けている。全道の期待を背負う彼らに、林業を志した経緯や将来への思いについて本音を聞いた。
挫折乗り越え林業の道に
来春、山越郡森林組合に就職する初代学生会長の和泉一紘さん(21)。いつも明るい人柄だが、挫折と挑戦を繰り返した人だった。

仲間とともに全道の期待に応える
2000年12月21日、余市町生まれ。5歳の時、両親の離婚をきっかけに母親に連れられて札幌に引っ越した。学生時代の思い出は陸上競技。中学生の時に熱中し、800m競争で全道大会に出場した。
高校でも陸上部に入部したが、「お前なら全国にも出場できる」という顧問の期待に押しつぶされた。体調不良を起こし、1年生の最後には退部。2年生ではクラスメイトとの不和、3年生になると親との衝突を繰り返すなど、うまくいかない日々が続く。
進路を決める時期に差し掛かった。「これまで迷惑を掛けた先生たちに恩返しをしたい」との思いがあり、教職の道を目指すため大学進学を決意したが、不合格に。
浪人して勉強を続けた。そんな中、「北の森づくり専門学院が来春開学」というニュースを母から知らされる。「あんたは手に職を付ける方があっているんじゃない」―。
林業については何も知らなかった。インターネットで調べていくうちに後継者不足の現状などに触れ、母の言葉もあり進学を決意する。
合格通知を受け取り、期待を胸に入学を待っていた20年4月。新型コロナウイルス感染症の流行により、1カ月以上入学が延期になった。
入学が遅れたことで想定よりタイトな授業日程となり、資格取得に明け暮れ休む暇はなかった。伐倒練習や高性能林業機械の操作習得などに励み、インターンシップや職場見学では道内各地に足を運んだ。
「現場の人は、受け口や追い口が一発で決まる。無駄がない」。インターンシップで実力不足を体感した。「安全作業が第一だが、給料をもらう以上、利益を生まなければいけない」。安全かつ効率的な作業が要求されることを肌で感じ、気持ちを引き締めた。
最終学年に進んだ21年度は、コロナによる休学もあったが着実に学びを深め、就職活動が始まった。試験を受けたのは、1回目の長期インターンシップで訪れた八雲町の山越郡森林組合。職場の雰囲気や多様な業務に従事できることに魅力を感じた。11月、面接の前日は緊張で眠れなかったが、思いは届き無事内定を受けた。
北森カレッジの売り文句は「即戦力」。1期生は学院の顔でもある。いやが上にも期待やプレッシャーがのし掛かる。しかし、今の和泉さんは期待に押しつぶされた昔とは違う。
「北森1期生の僕らの強みは独りじゃないこと。年齢や出身地はバラバラだが、林業に向かう姿勢はいつでも励みになる存在。就職後もつながりを大事に、悩みや課題を共有して乗り越えていければ」と前向きだ。
自身の変化もあった。「全てに全力じゃ体が持たない。できることとできないことがあると分かってきた」と明るく話す。
林業の道を諦めようと思ったことはないという。理由はシンプルだ。「木を切るのも、草を刈るのも楽しい。きれいになった景色に達成感が湧く」と屈託のない笑顔を見せる。
(北海道建設新聞2021年12月28日付1面より)