ビル建て替えで移転 市場活発化
新型コロナウイルスの影響で上昇傾向にあった札幌都心部のオフィス空室率が落ち着きを取り戻し始めた。医療関係、IT企業を中心に小規模事務所の解約が進んだが、大規模ビル建て替えによる移転などを理由に市場が活発化。2022年の新規供給は中規模ビル3棟にとどまる。今後、道銀ビルディング再開発に伴う移転需要も出てくることから広いオフィス床面積を持つ物件を中心に床不足が予想される。
コロナの収束が見えない中、テレワークの推進や業務改善などにより事務所を解約・縮小する企業が出てきたため、全国的に空室率は上昇している。
札幌は感染拡大前に比べ、中小規模ビルの空室が出始めたことで小幅な増加を見せた。オフィス仲介の三鬼商事によると、21年1月に2.74%だった平均空室率は8月に3.07%となり、17年5月以来の3%台に突入した。同じくオフィス仲介を展開する三幸エステートの調査でも、夏にかけて空室率は上昇を続け、8月には3.8%となった。医療関連企業を中心に小規模事務所の解約が続いたことに加え、北区の新規供給ビルが床を残して竣工したことなどが背景にある。
秋口からは、札幌駅前通にある北海道ビル建て替えに伴う移転需要が出たことなどで空室率は低下。12月の空室率は三鬼商事が2.61%、三幸エステートが3.13%。最近はコールセンターの増床やセガ(本社・東京)がゲーム市場の拡大をにらみ、札幌に企業進出するなど活発化している。
22年の主な新規供給は、じょうてつ(本社・札幌)がJR札幌駅北口で手掛けるビル(S造、地下1地上8階、延べ3369m²)や北海自動車工業(本社・札幌)が中央区南1条東4丁目で建設中のビル(S造、7階、延べ3194m²)がある。このほか特定目的会社による大通地区の仮称・南2西2PJ(S一部RC造、地下2地上13階、延べ8284m²)が完成を控える。
いずれも1フロア330―660m²程度と中規模な募集床で、高い内定率に達しているという。供給量は21年を下回る水準にとどまる。
今後、道銀ビルディング建て替えによるテナント移転の動きも出てくるが、660m²以上の大規模フロアの供給は23年までない。
三鬼商事の担当者は「ことしは新規供給が3棟あるが、そこまでマーケットに影響はないのでは」と指摘。三幸エステートは「需給バランスは引き締まった状態が続く可能性が高い」と分析する。