持続的発展へ“人財”を大切に
東宏(本社・札幌)は、トンネル工事の養生システムなどを扱う土木資材商社だ。軽仮設リース大手の日建リース工業(同・東京)の出資を受け、北海道だけでなく本州での提案営業を強化している。昨年4月に社長交代があり、専務として財務・人事を担っていた斎藤秀彦さんが陣頭指揮を執る。「東宏の財産は人。会社の持続的発展のため〝人財〟を大切にしたい」と話す。
設立は1972年。前社長の小林雅彦さんは公共事業縮小や販売利益減少などを背景に、オリジナル商品を扱う技術メーカーに生まれ変わろうと2000年ころから尽力。アーチ形の風船で2次覆工コンクリートを覆う養生システム「トンネルバルーン」や、生コンミキサー車のドラムをシート材で保温する「トラミッキーカバー」などヒット商品を数々出した。

「土木資材商社に原点回帰したい」と斎藤社長
18年9月に株式の95%を日建リース工業に取得してもらい、日建レンタコムグループ傘下になった。21年4月の社長交代で、斎藤専務が社長に昇格。小林さんは同グループのセントルメーカー・大栄工機(本社・滋賀県長浜市)社長に就任した。
社長就任を機に、東宏をトンネル技術メーカーから土木資材商社に原点回帰しようと考える。トンネル関連資材の企画開発は大栄工機が担い、東宏は営業やアフターフォローに特化することで財務基盤を強化。企画開発と営業、財務の3輪体制から、営業と財務の2輪体制に変えることでスリム化を図り、よりスピード感のある仕事を目指す。
モットーは〝人財〟。大型案件の多い東京支店はベテランと20、30代の若手社員が融合し、目標達成に向けて戦略を組みながら提案営業を展開する。こうした好事例を北海道に逆輸入することで、会社全体の活性化を図る意向だ。
トンネル工事の粉塵対策強化に対応するため、昨春から新規事業としてデジタル粉塵計を扱う。コンクリート打設状況を可視化する管理センサー「ジュウテンミエルカ」の販売にも力を入れる。

新規事業で力を入れるトンネル工事用のデジタル粉塵計
「今期は売上高19億円、利益1億円ほどをみている。来期は売上高20億円、利益1億円強が目標。5%成長を維持したい」と斎藤社長は話す。
トンネル工事の関連資材会社としてイメージが定着した一方、いわゆる〝明かり部〟の土木分野は手薄になってしまったと省みる。商社機能の再構築に向けて重要視したいと思っているのが、全道の協業8社と連携した地場ゼネコンとの関係強化だ。
機器の販売やリースだけでなく、トラブル対応や故障機代替、測定代行など、かゆいところに手が届くのが強み。日建レンタコムグループの総合力と東宏のきめ細やかなアフター力を生かし、地場ゼネコンと寄り添いながら、各地の社会資本整備に貢献したいと考える。
自席の壁に「凡事徹底(ぼんじてってい)」の四字熟語を飾る。普通のことを普通に行うのが一番難しく、普通のことを極めることこそ本当のプロだという意味。専務時代から親身になってくれた会社役員が大切にしていた言葉で、氏への尊敬の念もあって自身の心に刻んでいる。
「商社として営業と財務の両戦略をバランスよく取りながら、次世代を担う若手を育て、未来永劫(えいごう)続く会社にしたい」