半年で3D設計データ作製
タブレット端末を手に真剣なまなざしでパワーショベルの掘削作業を見守る女性。一二三北路(本社・札幌市北区)で事務員を務める三浦亜美さん(24)だ。自身が手掛けた、3D設計データを活用したICT施工が市内で始まった。異業種から建設業に転職して間もない女性の活躍が現場を支えている。

レトロフィットのガイダンスを受けて正確に掘削した
製菓製造販売の柳月(本社・音更)の元販売員という経歴を持つ。接客業以外にも他の分野で手に職を付けたいという思いから、2020年11月に一二三北路の除雪センター契約社員になった。21年4月からは正社員として土木工事課に在籍している。
設計データを組むスキルは、入社後にネクステラス(本社・札幌市西区)を通じて教わった。設計図の読み方も分からない段階からCADについての学習を始め、設計ソフトを用いてひたむきに取り組むこと約半年。黙々とできる仕事が好きな性分が生き、一通りの3D設計データを作製できるまで実力をつけた。

3D設計データの作製を担う三浦さん
21年9月に一二三北路が開いた住民説明会で、CADソフトのCivil3Dなどで作製した3D設計データを資料に、工事の進捗状況を視覚的に解説した。「自信は付いた」としながらも「まだまだ設計データの作り方で分からない部分がある。もっと一人でできることを増やしたい」と、さらなる自己研さんに意欲を見せる。
1月25日、同社のグループ会社が市水道局から受注した水道管改修工事で、作製した3Dデータを活用。油圧ショベルに取り付けると3D設計データに基づくガイダンスを受けることができるレトロフィットキットを初めて導入し、掘削した。自ら現場に立ち会い、誤差5cm以内の高い精度で埋設管を掘り起こすことに成功した。
レトロフィットキットは安価で、どのメーカーの油圧ショベルにも取り付けて使用できる。丁張りを必要としないため、作業を効率化できる。
土木工事課の多田真次長は「業界未経験の女性でもわずか半年で作製できたのは大きい。女性が活躍できる機会がますます増えるのでは」と話す。同社は設計から施工までを自社で担うことを念頭にICT専門部署を新設する方針だ。新部署には三浦さんが抜てきされる予定だ。
多田次長は「実績を作ることで、まだ市内では少ないICT施工が増えるのでは」と期待を寄せる。札幌市水道局給水部の秋山啓工事課長は「ICT施工は工期の短縮につながる。導入実績が増えれば発注形態も変わるかもしれない」と見通す。