処理、燃焼 外部委託なしで完結 CO₂削減にも効果発揮
廃プラスチックや海洋プラスチックの環境負荷が問題視される中、廃プラからエネルギーをつくるエルコム(本社・札幌)の技術に関心が高まっている。廃プラを外部委託せずに処理し、省エネやCO₂削減を実現できるシステムだ。環境汚染や脱炭素の対策が求められる時代で有効な選択肢となる可能性を秘める。
廃プラを国内でリサイクルする重要性は高まっている。2017年、日本の主な廃プラ輸出先だった中国が禁輸を決定。日本は輸出先を東南アジアや台湾に切り替えたが、21年のバーゼル条約改正で廃プラ輸出に相手国の同意が必要となり、輸出のハードルはさらに上がった。廃プラを主原料とする固形燃料、RPFは「国内市場でだぶついている状況」(相馬嵩央常務取締役)で、廃プラの処理費用も上がっているという。
4月にはプラスチック資源循環促進法が施行予定だ。事業者は自ら製造・販売したプラ使用製品の自主回収・再資源化が努力義務となる。焼却に伴う排熱利用、すなわちサーマルリサイクルを含め廃プラ処理の需要は高まるとみられる。
エルコムの「e―PEP(イーペップ)」は、廃プラを破砕・圧縮処理し、樹脂燃料に変えボイラで燃やして蒸気や温水を生み出す小型サーマルシステム。破砕機や圧縮機、樹脂燃料ボイラなどで構成される。一式の処理量は年間で最大100㌧程度だ。
軟質・硬質プラの両方に対応。ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)など酸素・炭素・水素原子から構成されるものならば種類を問わず処理でき、国内廃プラの7割が対象だ。汚れているプラや複合材など、他のリサイクル方法に適さないものでも構わない。塩素を含む塩化ビニルや窒素を含むナイロンは対象外だ。
プラスチックは種類ごとに発熱量が違うが、同社の小型ボイラは同時燃焼で約70%という高水準のエネルギー変換効率を実現したという。
システムの導入メリットは廃プラ削減だけではない。蒸気や温水をつくって既存ボイラと接続できるため、化石燃料の使用を減らして省エネやCO₂削減につながる。廃プラを発生現場で処理可能なため、移動や外部委託に伴うコストやCO₂を減らせる。監査法人の分析では、年間100㌧の廃プラ処理を想定した場合、最大290㌧のCO₂排出を減らせるという。
導入費用は5500万―6000万円程度で、耐用期間は約7年。道の補助金で導入費用の最大3分の2が補助される。
導入例ではコープさっぽろが17年からリサイクル施設で導入しているほか、昨年には長崎県対馬市にプラ燃料化装置を納入。同市の海岸に漂着する発泡スチロール製ブイの燃料化を進めていて、ペレットは市内の温浴施設などで使う予定だ。同社への問い合わせは、食品業など含め直近2年で10倍に増えたという。
環境関連機器を手掛けるエルコムは1991年設立。自社工場を持たないファブレス企業で、製造は国内外の企業に委託している。昨年12月には第5回ジャパンSDGsアワードの特別賞を受けた。