
山谷吉宏会長
相談に乗る「世話焼き隊」
道内中小企業が金融機関から融資を受けるとき、万一の際の肩代わり返済(代位弁済)を約束するのが北海道信用保証協会(本店・札幌)だ。新型コロナウイルスの感染が広がった2020年度は保証承諾額が過去最多となったが、一転して21年度は12月末時点で過去最少ペース。コロナ禍が長期化する中、同協会は中小企業をどうサポートするのか。山谷吉宏会長(68)は経営支援に注力すると明言する。
―21年度の信用保証承諾が減っている。
20年度の保証承諾額が1兆4550億円と19年度の4倍以上、バブル崩壊後やリーマンショック時をはるかに超える規模だったことが影響している。コロナ発生からあまり時間を置かず、実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」をはじめとする金融支援策が打たれたことが要因だ。
資金供給の点では20年度で一段落した様子で、ゼロゼロ融資の受け付けが昨年3月に終わってからは落ち着いている。借入金の返済ができずに代位弁済に至ったケースは20年度に545件と、1998年度以降で初めて1000件を割った。21年度も今のところ非常に少ない水準だ。
―協会独自の金融支援もあるか。
コロナが取り沙汰されるようになってすぐの20年1月末、観光業界などの売り上げ減少を見越して短期資金保証を打ち出した。これは18年の北海道胆振東部地震後に急いで立ち上げた企業支援策を基にしていて、地震の経験を生かせたと思っている。当初は企業の反応が少なかったが、2月末から3月にかけて申し込みが殺到した。
5月からは国・自治体のゼロゼロ融資が始まって、事務量がかつてない規模になった。当協会では誰もが休日返上で処理に当たった。
―全国的に昨年から倒産件数が激減している。経営状況が悪かった企業もコロナ融資で延命しているとも言われる。
審査基準が甘いのではないかとの指摘はある。それでも、金融機関と綿密に相談した上で対応していて、未知の病原菌を前にした社会的パニックを抑えることができたのは間違いない。今回に限って言えば、経済政策が明らかに機能したケースと位置付けて良いのではないか。
―建設業ではコロナの影響が小さいにもかかわらず、無利子だからとむしろ積極的に借り入れを増やす動きも見られた。
今まで影響が小さかったとしても、これから感染状況や社会、経済がどう変化するか誰にも分からない。悪化する可能性も当然ある。業種にかかわらず、使える制度を使って手元資金を厚くしておくのは経営として賢いやり方だ。
―資金支援が一巡した今、依然コロナに苦しんでいる企業に信用保証協会はどう向き合うのか。
各社がどうにか事業を維持しているのが今だとすると、ここからは経営をどのようにして上向かせるかが重要になる。今力を入れているのは「コロナ克服サポートプラン」と称する経営支援事業だ。融資窓口である金融機関をはじめ北海道中小企業総合支援センター、道立総合研究機構などとも連携して「世話焼き隊」となり、業種や事業規模の大小に関係なく、初歩的なことから経営者の相談に乗る。
ただ、まずは企業として生き延びることが第一だ。企業は地域の大事な資源で、雇用を保ち、地元の経済を下支えする。建設業なら、景気対策に加えて防災の観点からも、今後しばらく公共事業が安定的に確保されるだろう。うまく自社の事業に取り込んで、経営をしっかりと維持してほしい。
(聞き手・吉村 慎司)