練習環境や健康支える
元柔道選手の上野巴恵さんは、3月にも自宅がある当麻町に柔道場を建てる。選手として活躍した上野さんは、引退後に町で柔道を教えている。自宅に受け入れる下宿生の居住先や、新たな練習環境の整備を目的に柔道場建設を決めた。スポーツジムも併設し、柔道の指導のほか町民の健康を支える場としても発展を目指す。(旭川支社・中村 謙太記者)

新たに柔道場を建てる上野巴恵さん(左)と3人の下宿生
上野さんは旭川市出身で、2009年にアジア柔道選手権大会で優勝。04年アテネ、08年北京五輪で金メダルを獲得した長女の雅恵さんと12年ロンドン五輪銅メダルの次女、順恵さんと共に「上野3姉妹」として注目を浴びた。
現役を引退後は海上自衛隊に数年間勤務。18年からは両親が指導し、自身も教えを受けた柔道塾「北柔会道場」で指導を始め、町や旭川市で塾生を教えている。
柔道の大会などで全道を回るうち、指導者や練習環境に恵まれない地方の選手を数多く目にした。「本人の意志や才能を無駄にしてはいけない」との思いから、現在3人の中学生を下宿生として自宅に受け入れている。
口コミで指導を希望する選手が増え、自宅に代わる下宿先を考えるようになった。加えて新型コロナウイルス感染症により練習場所の当麻スポーツセンターが閉鎖。今まで通りの練習が難しかった経験から、練習場所の確保も検討し、柔道場の新築を決断。21年7月にクラウドファンディングを始め、建設費用を募った。
柔道場は自宅敷地内に設置する。規模はW造、平屋、延べ146m²で、3月末に完成予定。安保建設が施工し、設計は五十嵐建築設計が担当した。
町内は運動施設が少なく、旭川市へ行く必要があることから、町民が体を動かせる環境を整えるため、スポーツジムを併設。21年に立ち上げた合同会社ウエノが運営する計画だ。
上野さんは学童保育や町の運動教室にも携わる。「小中学生が気軽に立ち寄れて、運動も勉強もできるスペースとなれば」と、柔道の練習のほか、子どもたちの学習、町民の健康づくりの場としても提供したい考え。将来は2階を付け加え、より多くの下宿生を受け入れたいと語る。