「時代の流れ」を見て対応
コロナ禍で変わりゆく葬儀の在り方を踏まえ、独自サービスの展開や道内拠点の拡大を進めるのが、めもるホールディングス(本社・恵庭)だ。葬儀事業を中核に飲食や仕出し、故人の不動産の売買・管理受託などを幅広く手掛ける。村本隆雄社長(49)に小規模化が進む葬儀ニーズへの対応などを聞いた。
―主にどのような葬儀を扱っているのか。
一般葬のできる斎場を4カ所、家族葬の専用施設を12カ所、創業地の恵庭や札幌を中心に運営している。
家族葬の専用施設は2007年から始めた。当初は葬儀件数の1割だったが今では8―9割を占め一般葬と逆転した。通夜や告別式を執り行わない火葬式や直葬も増えている。
―葬儀はどのように変化してきたか。
小規模化、簡素化が確実に進んでいる。2度の震災が大きなターニングポイントだったと捉えている。
阪神淡路大震災では同じ地域内で数多くの人が犠牲になり、一般葬ができずにやむを得ず家族で見送る事例が多かったという。そこで家族葬という形もあるとの気付きが生まれた。東日本大震災ではさらに多くの犠牲者が出て、家族葬すら難しいという状況があった。
そしてコロナ禍だ。密や移動が避けられ、随時焼香などが取り入れられて葬儀規模は縮小した。
―コロナ禍によるサービスへの影響は。
当社の家族葬は、通夜なしで告別式と火葬を1日のうちにする「1日葬」を新たにメインプランと位置付け、通夜を含む「2日葬」はオプション扱いとした。単価は下がるため、その前提でコスト計算や経営計画を立て直した。数年後には1日葬が大半になると考えている。
―21年夏に始めた独自サービスの狙いを。
専用バスに故人のひつぎやご家族らが乗り、思い出の場所を巡る移動型葬祭サービス「巡輪偲(じゅんりんさい)」だ。故人との最後の旅行のようにお別れの時間を過ごすことができる。
コロナ禍を受けて「葬儀は必ずしも1カ所に集まらずもっと自由にできるのでは」と発想して始めた。コンセプトは「旅葬」だ。費用は通常の家族葬よりも増えるが、満足度はかなり高く好評を得ている。今は日帰りだけだがいずれは宿泊のできるサービスに発展させる。
―今後の事業計画の見通しは。
22年は千歳や苫小牧、函館など未進出の都市に家族葬「ウィズハウス」の施設を開き、道内展開を加速させる。数年内に帯広や釧路にも広げ、一通りの主要都市に進出したい。背景としてはコープさっぽろの設立した合弁会社と21年に連携協定を結び、組合員の葬儀需要を紹介してもらえるようになったことが大きい。
―新しい土地への進出はどう判断しているか。
1年のうちに亡くなる人は人口の1―1.2%ほどといわれ、葬儀需要の大きさは一定だ。市町村人口やシェア見込みを踏まえて投資回収ができるかを判断する。1つの自治体で7万―8万の人口規模は必要と考えている。
―顧客を増やす上でのポイントは。
亡くなる人の大多数は高齢者だが、どんな葬儀にするかは子や孫の世代の意見が反映される。SNS発信の強化が必要だ。
恵庭で半数以上のシェアを得ているが、札幌では6―7%ほどだ。10%に伸ばしたい。
―将来的に取り組みたい事業について。
仮想空間「メタバース」での葬儀を考えている。これからメタバースに親しむであろう若い人たちも、いずれ葬儀を取り仕切る世代になる。その頃には仮想空間での葬儀が受け入れられるかもしれない。
(聞き手・高田 陸)