血圧とは全身に張り巡らされた血管の隅々まで、血液を送り込むために必要な圧力のことです。この圧力は心臓の収縮によって生じ、動脈を通じて全身の血管に伝わるので、動脈内の圧力を測って、血圧としています。心臓が停止したり、動脈が急激に開いたりしてしまうと、血圧が急激に低下して、血液が流れなくなり、危篤状態となります。血圧は一定の値を維持していることが重要となります。
では、正常な血圧はどのくらいかというと、最高血圧が100以上135未満、最低血圧が60以上85未満とされています。この数値はmmHgという圧力を表す単位を用いますが、通常は省略されて使われています。健診などで血圧測定をすると「120の70ですね」とか看護師さんから声を掛けられたりするときの、あの数値です。
最高血圧か最低血圧のどちらかが、正常の範囲を超えていると、高血圧症と診断されます。なぜ、血圧が高くなるのかというと、いくつか原因があります。一つは、元々血圧を上げる作用があるホルモンが過剰に分泌されているときです。もう一つは血管の中の血液量が多くなり、血管が張った状態になっている場合です。
そして、もう一つ、これが一番問題なのですが、血管自体がしなやかさを失って硬くなり、その硬い血管内で血液の流れを確保するために、より強い力で血液を押し流す必要が生じて血圧が高くなる場合です。この血管が硬くなることを動脈硬化と呼んでいます。
血圧が正常より高い状態が継続すると、血管に負荷がかかりますので、それによって動脈硬化はさらに進行し、次第に血圧は高くなってきます。そうすると、硬くなった血管の中で炎症が起こったり、血管の内側が凸凹になり流れが悪くなったりします。
これらは血液が凝固して血栓を作るきっかけとなり、心筋梗塞や脳梗塞などの恐ろしい病気を引き起こすことになります。高血圧を放置するのは非常に危険なのです。
そこで、血圧を下げる治療が必要になります。薬で血圧を下げる方法が一般的ですが、合わせて、血圧を上げる遠因となっている、肥満、喫煙、飲酒などを抑えることが必要です。また、塩分の過剰摂取は血液量を増やし、血圧を上げる原因となります。塩分制限も重要です。
高血圧は新型コロナ肺炎重症化の基礎疾患でもあります。血圧は下げるに越したことはありません。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)