日ロ間往来や決済に不安
ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まって2月28日で5日目。西側各国が対ロ制裁を続々と打ち出す中、道内の企業や団体からも先行きを案じる声が広がっている。
ロシア貿易を主力とする北海道総合商事(本社・札幌)の正司毅社長は「モスクワ、ウラジオストク駐在の社員計4人に、指示があればすぐ帰国できる準備をするよう伝えた」と明かす。欧州諸国がロシア航空機による自国領空の通過を禁じ、ロシアも同様の対抗措置を取り始めていて、日ロ間で人の往来が難しくなる事態が考えられるためだ。
ロシアの銀行を国際決済ネットワークから外す制裁で西側が一致しているのも痛手だ。同商事にとっては、現地の銀行を使って活動してきたロシア子会社とお金のやりとりができなくなることを意味する。ただ、制裁対象となる銀行や実施時期はまだ見えていない。
ロシアに高機能手袋を輸出する青井商店(同・旭川)は2月下旬にサハリンのパートナー企業から受注し、まさに出荷の準備を始めたところだった。「決済できない懸念が出てきたため保留して、今は情報収集に徹している」(青井貴史社長)。
影響は貿易ビジネスにとどまらない。道は侵攻を受け、3月上旬に予定していた日ロのオンライン交流事業2本を急きょ中止した。サハリンとの季節定期航路がある稚内では、本年度の運航が終わっていたため直接的なしわ寄せは出ていないものの、同市の三谷将サハリン課長は「かつてない規模の制裁でどんな影響が出るか注視している。制裁はもろ刃の剣で、見守るしかない」と話す。
物価高を心配する声も強い。帯広財務事務所の上野浩二所長は「燃料高騰から派生し、家畜飼料などを含めて多くの商品が値上がりするだろう。一方、ロシアからの小麦輸入が止まれば、逆に国産の需要が高まり小麦価格が上向くかもしれない。こうしたプラスがあり得るが、トータルすればマイナス効果の方が大きいのでは」と指摘する。
片や、エネルギー分野では冷静な見方が一般的だ。液化天然ガス(LNG)をサハリンから輸入する北海道ガスによれば、調達に影響は出ていないという。担当者は「LNG調達は供給源を限定しない契約となっていて複数のルートがある」と説明。また、都市ガスに関しては原料調達価格がすぐに料金に反映されるものではないと話す。
北海道電力は発電に必要な石炭の一部をロシアから調達しているが補助的な量で、メインはオーストラリア産のため大きな影響はないとする。だが今後の情勢変化で、これまでロシアから輸入してきた海外の大口事業者などが調達先をオーストラリアに代える可能性もある。そうなれば需給が逼迫(ひっぱく)し、これまで通りの価格で調達できない懸念が生じる。
建設・不動産業界では資材相場を不安視する向きが目立つ。札幌のあるデベロッパーは「価格上昇が続きそうなら着工を前倒しする社も出てくるだろう」と見通す。
揺れる各業界。不透明な情勢が続きそうだ。