運搬物集約し生産者の費用削減
名寄市内で、物流拠点の構築に向けた動きが進んでいる。道北地域の物流業界は、運転手の長時間労働や人材不足に加え、往復のいずれかが空荷になる片荷輸送により、非効率的な状態となっている。運搬物を集約する拠点を設けることで、物流の効率化を図るとともに、輸送コストを削減して生産者の費用負担を減らしたい考えだ。拠点の構築に向けて官民が連携している。(旭川支社・沓沢奈美記者)
道北地域では、農水産物の輸送量が季節に影響されるため、片荷輸送が頻発。ドライバー不足も重なり、長距離輸送のコストが高くなっている。北海道開発局では2017年度、名寄周辺地域を北海道型地域構造の保持・形成に向けたモデル地域の一つに選定し、名寄周辺地域の課題は物流の効率化と提起した。
開発局の動きを受け、名寄市や名寄商工会議所などは物流の課題を共有するために協議会を設立。20年度からは道北圏域ロジスティクス総合研究協議会へ改組し、物流関係者や道北地域の農業、漁業、製造業者などを対象に悩みを聞き取ってきた。
道央圏から道北地域に荷物を輸送する事業者からは、ドライバーの長距離運転と人手不足、片荷輸送による効率の悪さが課題として挙がった。生産者や製造業者からは、輸送コストがかかることや、商品を保管する施設の老朽化や手狭さに悩む声があった。
協議会はヒアリングなどを踏まえ、課題を解決するためには名寄市内に物流拠点を置くのが効果的と判断。ヤマト運輸から市に派遣された安藤正男総合政策部参事は「拠点があればドライバーを交代したり、名寄を起点に荷物を運ぶ会社を変えることができたり、さまざまな可能性が出てくる」と話す。小さいロットの荷物を混載することで効率化を図るほか、拠点で荷台を引くトラックのヘッドを交換すると、運送時間の短縮が期待できる。
24年度からの時間外労働の上限規制にも対応できるようにする計画だ。市の石橋毅総合政策部長は「苫小牧港から、1人のドライバーが1日に往復できる北限が名寄。拠点を置くと効率が良い」と話す。
輸送に必要な環境整備に向けた検証も始める。市など6団体は、トラックに搭載する保冷用ボックスの充電に、再生可能エネルギーを使用する実証試験を開始する。2月に試験に関わる協議会も発足した。
課題となるのが建設地の確保だ。市などは、21年12月に名寄工場を撤退した王子マテリアに対し、跡地活用策を要望。その一つとして物流拠点化を挙げている。石橋部長は「輸送コストを削減して、荷主の生産者へ利益を還元したい」と拠点の必要性を話す。今後も王子側と協議を進めていく考えだ。