生ごみを高速分解処理 バイオベンチャーのkomham

2022年03月17日 10時00分

「大食い」や「早食い」の微生物を抽出 大幅に容積減少

 生ごみを高速に分解処理して大幅な容積減少を実現―。そんな独自の微生物テクノロジーを有するのがバイオベンチャーのkomham(コムハム、本社・札幌)だ。自社ラボでの研究や資金調達を進めながら、微生物群の販売と新サービス開発に取り組んでいる。西山すの社長は「将来的にはごみ処理インフラのアップデートまで実現したい」と意気込む。

処理施設内に菌床を準備する様子

 同社のコア技術は生ごみなどの有機性廃棄物を食べて高速分解する微生物群「コムハム」だ。コンポストで堆肥をつくるのと同じ仕組みだがスピードに特長がある。通常のコンポスト処理は数週間から数カ月かかるのに対し、コムハムはわずか1日で98%を処理できるという。西山社長は「大食いが得意、早食いできるなどの性質を持つ多様な微生物を抽出し、組み合わせて実現した」と説明する。

■大型プラント不要

 分解過程で水以外に二酸化炭素が発生するが、同量の焼却処理に比べて量は1%以下に減るといい、ごみ処理の脱炭素化に貢献する可能性を秘める。バイオ処理のため電力や複雑な大型プラントが不要なのも事業者にとってメリットだ。

 分解後は元々の容積の数%に当たる無機物だけが残る。菌床の一部としてリユースするほか堆肥にも使える。腐敗前に処理されるため臭いも出ず、悪臭防止法が住居地域で要求する水準も満たすという。

 現在の事業はいわば「微生物のサブスク」だ。顧客はコムハムの菌床に廃棄物を敷き、かき混ぜて処理をする。微生物は少しずつ減るため定期的に補充する。コストは、1日に生ごみ10㌔を処理する場合で微生物群が13万円ほど。費用感は処理規模などで大きく変わるという。微生物群と処理設備を組み合わせた新しいシステムも開発中で、近いうちの販売を見込んでいる。

■本格的な社会実装

 コムハムは元々、西山社長の父親と知人が限られた顧客相手に提供していた技術だ。効果と実績は確実ながら、自然由来の微生物群を活用するため科学的根拠が不明だったという。

komhamの西山社長

 技術を受け継いだ西山社長は「どんな微生物が何をしているのか突き止めて定量的な事業にしたい」と、起業から現在までの2年を研究と課題検証に費やした。北大出身の研究者をフルタイムで雇用し、2021年春には北海道経済産業局の助言で札幌テクノパークに自社ラボを開設。今ではラボの人工環境でコムハムをつくれるようになり、生産を始めた。特許申請も準備中だ。

 本格的な社会実装を目指し、実証も進めている。21年秋には渋谷区内の公共施設や商業施設にコムハムの入ったコンポストを設置。近隣住民や施設の飲食店から生ごみを提供してもらって運用課題を探った。実証に参加した東急不動産の運営施設では、パンケーキ店の生ごみを堆肥化して施設内のイチゴ畑で使い、採れたイチゴを提供するプロジェクトも進む。

 資金面では起業して早くに北海道銀行から2000万円を、21年には母校を運営する学校法人立命館の起業支援ファンドから5000万円の融資を受けた。札幌市による賃料や人件費の補助も大きいという。今夏には株式発行での資金調達にも動く予定で、協業シナジーのある事業会社からの調達を進める考えだ。

■持続可能な未来へ

 生産技術の確立をバネに今後は処理設備と組み合わせたシステムを事業展開する。将来的にはシステムの販売にとどまらず、ごみ処理インフラ全体をアップデートして持続可能な未来への貢献を目指す。

 スタッフは西山社長を含め4人。2月には「J―Startup HOKKAIDO」の認定スタートアップに選ばれた。道経産局や札幌市による有望企業の共同支援事業で、20年から現在まで32社が認定されている。

 西山社長は苫小牧市出身。立命館アジア太平洋大学を卒業後、都内でのPR会社勤務やフリーランスを経て20年1月に起業した。


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