禁輸や森林認証停止 第2次ウッドショック警戒
ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まって1カ月が過ぎた。日本を含む西側各国からの強い経済制裁と、これに反発する対抗措置の応酬で、世界経済の混乱が続く。エネルギーを筆頭にさまざまな分野で価格上昇が見られる中、建築に深く関わる木材でもコスト増要因が次々と浮上している。(経済産業部・吉村慎司記者)
「第2次ウッドショックが起こりかねない」。道北の木材商社の社長は危機感を募らせる。業界を驚かせたのは、ロシア政府が10日に一部木材の輸出禁止を発表したことだった。「取引先がロシア極東の港で木材を船に積んで出航を待っていたところ、禁輸が即日発効したため、やむなく降ろしたと嘆いていた」(加工業関係者)。
対象は日本など「非友好的」な48カ国・地域への輸出で、単板、チップ、丸太について2022年末まで禁じられた。このうち丸太は、加工業育成のために数年前から政策的に縮小していて、1月には全面的に輸出がなくなっている。
林野庁は11日、各品目に関わる国内状況をまとめた文書を公表。これによると21年のロシア産チップ輸入量は8万㌧で、全輸入の1%程度という。単板は体積ベースで24・4万m³と82%を占めるが、国内で流通する合板の原料は国産材が多く、ロシア産単板のシェアは約2%にすぎない。国内で即座に悪影響が広がる状況ではなさそうだ。
禁輸対象地域のうち、木材のロシア依存度が比較的高いのはEU。ロシア側の主眼も、まずはEUに揺さぶりをかける点にあると考えられる。
懸念されるのは品目の拡大で、焦点となるのが製材だ。国連食糧農業機関(FAO)によればロシアの製材輸出量は19年時点で世界1位。仮に出荷が止まれば、世界規模の建築コスト上昇につながる。
禁輸措置の少し前、西側からロシア材に対する事実上の制裁があったのも重要な点だ。環境保護などの面から森林への認証事業を手掛ける国際団体が、ロシアとベラルーシの森林に対する認証停止を相次いで発表した。
4日、スイスに本部を置くPEFCが、両国の森から産出される木材全てを「紛争材」として認証の対象外とすることを決定。武装集団が取引に関わった木材という位置付けだ。ドイツを本拠とするFSCも同様の措置を取った。
これによって品目を問わず、特に大手企業による両国産材の取り扱いに縮小圧力がかかる。「欧米は日本と比較にならないほど認証を重んじる。代替を進める中で需給バランスが崩れるかもしれない」(商社関係者)
ロシアは無論木以外にも、鋼材の原料となる鉄鉱石、セメント製造に必要な石炭など、建設資材に関わる輸出物が多い。本道建設業界でも、これから自社や地域に起こり得る影響を想定することが欠かせない。