
忠沢一弘社長
飲食各社 協奏から協業へ
居酒屋「串鳥」を展開する札幌開発(本社・札幌)は、焼き鳥の持ち帰りを強化する方針だ。持ち帰り専門店の開設に続き、4月にはキッチンカーでの出店も予定する。コロナ禍で減収の歯止めがかからない状況が続く飲食業界で、どう現状を打開するのか忠沢一弘社長(60)に展望を聞いた。
-コロナ禍による団体利用の減少などで大型飲食店の運営は厳しいが。
飲食業界の環境変化に対する当社としての回答が「持ち帰りの強化」だ。
座席数の多い大型店はテナント料や人件費など維持コストも大きく、当社も札幌市内中心部の店舗の閉店・集約を進めた。ただ、串鳥はもともと持ち帰り需要が高く、持ち帰りによる売り上げが2割を占める店舗もある。2月15日に開いた持ち帰り専門店は午前11時からオープンしているため、夕方からオープンする店舗では拾いきれなかった昼間の需要にも応えられる。4月からは市内の商業施設などにキッチンカーを出動させるほか、今後、持ち帰り専門店のさらなる店舗展開も進める。
-持ち帰り以外の店舗についてはどのような運営を。
コロナ禍以前に、人口減少により胃袋の数が減っている。これまでの事業をそのまま続けていても衰退するだけだ。持ち帰り強化のほか、接待などにも活用できる高級路線の新しい焼き鳥専門店ブランドの立ち上げを検討している。
既存店舗もてこ入れする。多くの店舗は外から焼き場が見えるレイアウトになっているが、客席まで遠く、提供まで少し時間がかかる。焼き鳥は焼きたてが一番おいしい。今後は1秒でも早く食べてもらえるよう、店内中心部に焼き場を移動する改修も考えている。
串鳥は家族連れもメインターゲット。基本的に飲み放題がメニューに無いのも、家族で来てゆっくり食事やお酒を楽しめるような店舗にしたいからだ。新規出店については、道内地方都市など郊外でも検討する。住宅街に近い郊外に店舗を構えれば、家族での来店やテークアウト客も呼び込みやすい。
-飲食業界はコロナ禍を経てどのような変化を遂げるべきか。
外食は日常的な活動だったが、コロナ禍によって特別なものになってしまった。「たまの外食」に選ばれるような店舗をつくり上げる必要がある。
このためには顧客満足度を高めることが重要で、飲食各社は競争から協業にシフトしなければならない。当社は串に「刺す」「巻く」という手間のかかる技術を持っている。これを同業他社に製品などとして提供し、代わりに他社の商品や技術などを導入させてもらう。現在は有名スープカレー店と協力している。
飲食以外にも専門性を持ち合わせている事業者同士力を合わせたい。近年のキャンプブームに合わせ、アウトドア用品メーカーと共同でキャンプなどに使える焼き鳥の焼き台開発にも着手している。
-会社にとって挑戦とは。
新たな取り組みへの挑戦は社員のモチベーション向上にもつながる。事業の芯は変えずに積極的に取り組みたい。飲食業界はトップダウンの会社が多いが、当社は人事などさまざまなプランニングを社員に一任し、自分たちで判断してもらうことに重きを置いている。持ち帰り専門店の運営方法も同様だ。
串鳥は地域に寄り添ってきた居酒屋。親子3代で利用してくれているお客さまも多いだろう。その気持ちをつなぐためにも新たなチャレンジで持続的な経営を目指す。
(聞き手・宮崎嵩大)