より良い被災地復興へ 道建協など協力

19年度の起業家精神育成プログラムで実施したフィールドワークの様子。レジリエント社会論でも践的な学習を展開したい考えだ
北大公共政策大学院は2022年度、レジリエント社会論を開講する。道内自治体でのフィールドワークなどを通じて、まちづくりやビジネスの側面から災害被災地の復興をデザインし、地域をビルド・バック・ベター(より良い復興)に導く人材を育てる。道内建設業の若手経営者へのインタビューも予定するなど、北海道建設業協会や北海道建青会が全面的に協力する。
北大など6大学のコンソーシアムは19年度から21年度までの3カ年に「レジリエント社会の構築を牽引(けんいん)する起業家精神育成プログラム」を展開した。レジリエント社会とは、災害など極度の状況変化に直面した時に基本的な目的と健全性を維持できる社会。プログラムでは復興や防災・減災に関する新規事業を設計、実装できる人材育成を目指した。
受講者は、阪神淡路大震災や東日本大震災、胆振東部地震など被災地でのフィールドワークを通じてそれぞれビジネスモデルを立案した。
21年度に受講した北大大学院公共政策教育学部の米田夏輝さんは、自治体の防災対策立案に役立てようと「DPES(Disaster Prevention and Evacuation System)」を開発。省庁ごとに公表している防災関連のデータを集約し、特定の自治体の災害被害を予測するシステムで、住民や行政職員が予測データを共有することにより住民参加型の地域防災計画を作ることができる。
米田さんは現在、登別市の防災担当者と北大公共政策大学院の防災政策研究ユニットが共同開催する防災ラボに参加。登別市沿岸地区の避難計画作りを支援するなど実際の防災政策に深く関わる動きが生まれている。
北大公共政策大学院は、このプログラムを発展させる形で22年度第2学期にレジリエント社会論を開講する。講義では、地域の防災に密接に関係する建設業者のインタビューや自治体でのフィールドワークを実施。災害発生後を想定してどのように復興するべきかを考え、各自でまちづくり計画やビジネスモデルをデザインする。
インタビューは、担当教員である加藤知愛北大公共政策大学院学術研究員が進めている「建設業若手経営者意識調査」で実践。北海道建青会の会員に災害時の活動や建設業の社会的地位の認識を聞き出す。フィールドワークは登別市や北後志管内の自治体を対象に調査する予定だ。
加藤学術研究員は、講義を通じて受講者一人一人がその人なりのレジリエント社会の考え方を確立して持ち、互いに理解し合う姿を思い描く。それぞれが将来は行政や民間企業、研究者など別々の道を歩んだとしても「同じ復興の風景を描いた仲間として、何かあったら知恵を出し合い課題解決のために力を尽くす関係性をつくりたい」としている。