北海道国立大学機構理事長 長谷山彰氏に聞く

2022年04月07日 14時00分

産学官金で地域課題解決

 1日付で発足した北海道国立大学機構理事長に、前慶応大塾長の長谷山彰氏が就任した。北海道建設新聞の単独インタビューに応じ、私大経営で培ったノウハウを生かし、経営統合した帯広畜産大、小樽商大、北見工大の運営法人トップとして改革に当たると抱負を語った。3大学の特色を引き出し、分野融合的な教育・研究を進め、建設業を含む産学官金連携で本道に横たわる地域課題の解決を目指す。新領域での研究を支援する基金の早期創設にも意欲を示した。(小樽支社・塚本遼平、帯広支社・城和泉記者)

長谷山彰理事長

 ―公募での理事長選考に応募した経緯、思いは。

 募集要項に「理事長は学外者で、学長を兼ねない」とあり、経営と教学の分離を明示していた。自主自立的な経営を目指す民間私立の発想で、経営努力により財政基盤を強化するという姿勢だ。私大経営で培ってきた経験を生かして国立大学法人の改革に当たり、経営方針にある教育研究の融合的な発展など新たな挑戦に貢献できると考えた。

 法人をゼロから作り上げるパイオニアとしての喜びもある仕事だ。幼少期は平取町で過ごしたこともあり、北海道には親近感があった。

 ―本道の課題解決に統合3大学ができることは。

 人口減少や産業構造の変化など、本道は全国的に見ても課題が多い。ただ、北海道経済連合会の2050北海道ビジョンが示すように、解決のフロントランナーを目指す姿勢が重要。大学としては教育や人材育成、イノベーションを創出できるような研究を通じ、産業界や科学界とタッグを組んで課題に立ち向かう。

 ―統合によるメリットは。

 高度人材の育成を担う教育イノベーションセンターを拠点とし、3大学にまたがる学部生・大学院生向けの文理融合科目履修など、分野横断的な教育を展開できる。専門科目だけでなく、人間や物事の本質を見抜く力を養う教養、リベラルアーツ教育にも力を入れる。

 研究面ではオープンイノベーションセンターを通じ、研究成果の社会実装を推進する。AIスマート農畜産業のプロジェクトは北見工大のIoT研究と連携が進んでいて、こうした取り組みを拡大発展させる。

 経営効率化で、6年間に3億円を生み出す計画を掲げている。捻出分は教育研究への投資に還元したい。

 ―理事長自身の役割とは。

 精力的に資金調達に当たり、かつ基金化することが重要だ。巨額の研究費確保には競争的外部資金が欠かせないが、採択期間は3―5年と短いのが欠点だろう。自己資金の獲得で、将来的に役立ち得る新たな領域の研究に挑戦できるよう、長期的に支援可能な基金の速やかな創設を目指す。慶応大塾長時代に尽力した基金拡充の経験を生かしたい。

 道内外からの寄付金や受託研究、企業とのコンソーシアムなどが考えられる。特に道内企業とは、寄付を受けるだけでなく、共同で人材育成や研究に当たる関係性を構築したい。

 ―建設分野に関わる産学官金の取り組みは。

 例えば北見工大が進めている寒冷地での防災工学。極寒の中で道路や橋梁に使うコンクリートの劣化状況分析など建設業と共同で研究していて、今後拡充する方向だ。

 林業系の研究と、昨今注目を集める木造高層ビルの建築を結び付けることもポイントになる。林業はSDGsやCO₂排出削減の観点からも重要。戦後の植林分を活用しないとゼロカーボン達成は難しい。研究から社会実装まで一貫した林業の体制づくりに貢献できれば。

 長谷山彰(はせやま・あきら)1952年11月22日生まれ。秋田市出身。75年慶応大法学部、79年同文学部卒。84年同大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。97年慶応大文学部教授、17年慶応大塾長を経て、22年から現職。法学博士。

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